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2008年12月15日更新
この本が好き!

この本が好き! 第13回
役に立たないことって、なんておもしろいんだろう
『どくとるマンボウ青春記』
幼児図書出版部 ほろほろ鳥

「ほろほろ鳥さんひまそうですねえ、だったら
 『この本が好き!』の原稿書いてくださいよ。」

いや、べつにひまってわけじゃないんですけど……。

*       *       *

えー、青い鳥文庫読者のみなさま、おひさしぶりです。
と、いっても多くの人はご存じないと思いますが、
2年半ほど前まで青い鳥文庫の編集部にいた、ほろほろ鳥です。

いまはおなじフロアにある絵本の部署にいるのですが、
ちょっとサボって『黒魔女さんが通る!!』でも読もうかななんて
青い鳥文庫の編集部に近づいたら、
前野メリーさんの圧力のある笑顔につかまって、
ひさびさにおじゃますることになったわけです。

*       *       *

さて、思い出の1冊としてご紹介するのは、
北杜夫(きた もりお)の『どくとるマンボウ青春記』。

文字通り青春の回想記なわけですが、舞台となっているのが
敗戦間もない昭和20年ごろですから、いまはもちろん、
ぼくが読んだ当時とも、なにもかもがちがっています。

それでも読みはじめると、ぐいぐい引きこまれて、
旧制高校やその寮生活、おおらかな先生たちや、
やり場を探して暴走する若いエネルギー、友人との関係が、
まるで自分のことのようにせまってきます。

そして爆笑につぐ、爆笑……。

*       *       *

小学校の低学年まではからだが弱かったわたしは、けっこう本を読む子でした。
ところが3年生になって急に身体が強くなると、本とはおさらば。
なぜなら「スポーツ万能のかっこいい男の子」が
人生の目標になっちゃったから。

ふたたび本を読みはじめるようになったのは、
小学校6年生の冬から中学1年生にかけて。

『おせっかいな神々』(星新一)、『吾輩は猫である』(夏目漱石)、
そしてこの『どくとるマンボウ青春記』をはじめとする
北杜夫の「どくとるマンボウ」シリーズのおかげといってまちがいありません。

*       *       *

なかでもユーモアエッセイに分類される「どくとるマンボウ」シリーズは、
ひまなとき、ひまでないとき、テストの前やら、いやなことがあったときと、
時と場所を選ばず、何度も何度も読みました。

いつ読んでも笑えるし、なにより「役に立たない知識」「ムダな熱情」が満載で、
「役立たず」や「余計者」をまるごとみとめてくれる感じが、とても良かったから。

『どくとるマンボウ青春記』
『どくとるマンボウ青春記』

『どくとるマンボウ青春記』
北杜夫/作
中公文庫 ※現在絶版

『どくとるマンボウ青春記』

『どくとるマンボウ青春記』
北杜夫/作
新潮文庫

それまで目指してきた「スポーツ万能のかっこいい男の子」というポジションが
ムリだとわかりはじめた時期、「役に立たないことって、なんておもしろいんだろう。」
「べつに役立たずでもいいんだ。」というのは目からウロコ。
人生の方向が180度変わった瞬間といえます。

*       *       *

まあ、ある意味、ここで人生まちがった……ともいえるのですが、
とにかく、この本がなかったら、わたしは編集者にはなっていなかった。
それは、ぜったいまちがいのないことなのです。

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