


青い鳥っ子のみなさん、こんにちは!
青い鳥文庫編集部のおとなり、「児童図書第一出版部」で
働いている、新入社員のモエモエです。
「YA! ENTERTAINMENT」では、みなさんが大好きな
小林深雪先生の「泣いちゃいそうだよ」シリーズの
担当をしています。
わたしが紹介するのは、梨木香歩さんの書いた
『村田エフェンディ滞土録』です。
梨木香歩さんといえば『裏庭』が有名ですが、
小学生が主人公の『裏庭』にくらべ、こちらは少し
大人向けかもしれません。
でも、読書が得意な青い鳥っ子のみなさんなら、
そう遠くないうちに読めると思います。
まずは、ちょっぴりヘンテコなタイトルの
説明をしてみましょうか。
「村田」は、主人公の名前です。「エフェンディ」
というのは、歴史文化を研究するのが仕事である
彼に対する敬称、つまりは「先生」みたいな意味です。
「エフェンディ」っていったい、どこの国の言葉?
って、思うかもしれませんね。
その答えが、最後の「滞土録」。
土耳古(トルコ)に滞在した間の記録、ということです。
東洋と西洋が混ざりあう土耳古の首都スタンブールで、
村田は合縁奇縁(あいえんきえん)に導かれながら、
日々を過ごしていきます。
むずかしそう、ですか?
でも、扉を開けてみてください。
そこに広がっているのは、摩訶不思議(まかふしぎ)で
魅力的な世界です。
村田がもらってきた稲荷神社のキツネのお守りが、
下宿先の壁にうめこまれたかつての神々と格闘したり、
むかしの衛兵のまぼろしが、中庭の壁石のところに
ぼんやりと現れたり。
そんなことが起きるのも、住んでいるのが
「土耳古政府から払い下げられた遺物の寄せ集めの
ような建物」だからです。
そこに女主人である英国(イギリス)人、下働きをする
土耳古(トルコ)人、村田と同じく下宿をしている
独逸(ドイツ)人と希臘(ギリシャ)人、
そして鸚鵡(おうむ)と暮らしているのです。
わたしが一番好きなのは鸚鵡なのですが、
覚えている言葉はわずかなのに、女主人の料理のにおいが
食堂に満ちてくると必ず「失敗だ。」とさけんだりして、
笑わせてくれるんです。
そんな鸚鵡が覚えるのが、
「It’s enough!(もういいだろう!)」
という言葉です。うんざりしたときに使うせりふなのですが、
これが物語の終盤、印象的に使われます。
第一次世界大戦の戦場で、よきケンカ相手だった
土耳古人ムハンマドの肩の上で。
この物語で描かれているのは、国も宗教も異なる人々との
友情をはぐくんだ日々です。
そこにドラマはありません。
しかし、戦争によって、そのかけがえのなさを知るのです。
子どものころ、わたしはずいぶんと背のびをして
本を読んでいました。
本がぶ厚ければぶ厚いほど、字が小さければ小さいほど、
冒険心がくすぐられました。
いま、読んでみてもいいし、いま、全部がわからなくても
よい物語だと思います。
よかったら、手にとってみてください。


『村田エフェンディ滞土録』
梨木香歩/作
角川書店

『村田エフェンディ滞土録』
梨木香歩/作
角川文庫