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2011年8月1日更新
この本が好き!

この本が好き! 第60回
摩訶不思議な世界にひそむ、かけがえのなさ
『村田エフェンディ滞土録』
(児童図書第一出版部 モエモエ)

青い鳥っ子のみなさん、こんにちは!
青い鳥文庫編集部のおとなり、「児童図書第一出版部」で
働いている、新入社員のモエモエです。
「YA! ENTERTAINMENT」では、みなさんが大好きな
小林深雪先生の「泣いちゃいそうだよ」シリーズの
担当をしています。

わたしが紹介するのは、梨木香歩さんの書いた
『村田エフェンディ滞土録』です。
梨木香歩さんといえば『裏庭』が有名ですが、
小学生が主人公の『裏庭』にくらべ、こちらは少し
大人向けかもしれません。
でも、読書が得意な青い鳥っ子のみなさんなら、
そう遠くないうちに読めると思います。

*       *       *

まずは、ちょっぴりヘンテコなタイトルの
説明をしてみましょうか。
「村田」は、主人公の名前です。「エフェンディ」
というのは、歴史文化を研究するのが仕事である
彼に対する敬称、つまりは「先生」みたいな意味です。

「エフェンディ」っていったい、どこの国の言葉?
って、思うかもしれませんね。
その答えが、最後の「滞土録」。
土耳古(トルコ)に滞在した間の記録、ということです。
東洋と西洋が混ざりあう土耳古の首都スタンブールで、
村田は合縁奇縁(あいえんきえん)に導かれながら、
日々を過ごしていきます。

むずかしそう、ですか?
でも、扉を開けてみてください。
そこに広がっているのは、摩訶不思議(まかふしぎ)で
魅力的な世界です。

*       *       *

村田がもらってきた稲荷神社のキツネのお守りが、
下宿先の壁にうめこまれたかつての神々と格闘したり、
むかしの衛兵のまぼろしが、中庭の壁石のところに
ぼんやりと現れたり。

そんなことが起きるのも、住んでいるのが
「土耳古政府から払い下げられた遺物の寄せ集めの
ような建物」だからです。
そこに女主人である英国(イギリス)人、下働きをする
土耳古(トルコ)人、村田と同じく下宿をしている
独逸(ドイツ)人と希臘(ギリシャ)人、
そして鸚鵡(おうむ)と暮らしているのです。

*       *       *

わたしが一番好きなのは鸚鵡なのですが、
覚えている言葉はわずかなのに、女主人の料理のにおいが
食堂に満ちてくると必ず「失敗だ。」とさけんだりして、
笑わせてくれるんです。

そんな鸚鵡が覚えるのが、
「It’s enough!(もういいだろう!)」
という言葉です。うんざりしたときに使うせりふなのですが、
これが物語の終盤、印象的に使われます。
第一次世界大戦の戦場で、よきケンカ相手だった
土耳古人ムハンマドの肩の上で。

この物語で描かれているのは、国も宗教も異なる人々との
友情をはぐくんだ日々です。
そこにドラマはありません。
しかし、戦争によって、そのかけがえのなさを知るのです。

*       *       *

子どものころ、わたしはずいぶんと背のびをして
本を読んでいました。
本がぶ厚ければぶ厚いほど、字が小さければ小さいほど、
冒険心がくすぐられました。
いま、読んでみてもいいし、いま、全部がわからなくても
よい物語だと思います。
よかったら、手にとってみてください。

『村田エフェンディ滞土録』

『村田エフェンディ滞土録』
梨木香歩/作
角川書店

『村田エフェンディ滞土録』

『村田エフェンディ滞土録』
梨木香歩/作
角川文庫

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