先月に引きつづき歌詞の思いちがいパート2、今回は「ポップス編」でいきます。思いちがいというより、むしろ「空耳」と呼ぶほうがいいかもしれない。
ぼくの小学生時代は、アメリカンポップスが全盛だった。最初はエルビス・プレスリーが一大ブームで、こんな歌がよくラジオから流れていたものだった。
「♪ユエンナツバラ ハウンドドッグ」
たしかにそう聞こえたのだが、「ユエンナツバラ」とはどういう意味か? そのころ、小学生なのに妙に英語につよいKという同級生がいて、きちんと解説してくれた。
「ここは、You ain’t nothin’ but a hound dog(ユー・エイント・ナッシング・バット・ア・ハウンドドッグ=おまえはただの猟犬さ)と歌っているのだが、早口なので、日本人の耳にはユエンナツバラと聞こえるのである」と。
そ、そうなのかと、ぼくはいたく感心したおぼえがある。

おなじころヒットしたのがジーン・ピットニーの「ルイジアナママ」という歌で、これは日本人歌手が歌った日本語バージョンのほうが有名だった。
「♪あの娘はルイジアナママ
やってきたのはニューオーリンズ
髪は金色 目は青く
本物だよデキシークイーン」(訳詞:漣健児)
と軽快なメロディーで歌われていくのだが、問題はこのあとだ。
「♪マイ ルイジアナママ オニオリ」
オニオリ? なんだ、それは? 謎である。ここでまた同級生Kが登場する。
「この部分は本当は、From New Orleansと歌うべきなのだが、日本人はうまく発音できないのでこうなってしまうのである」と、K。
なんと、謎の「オニオリ」とは、「フロム・ニューオーリンズ」のことだったのだ! これには感動さえおぼえた小学生のぼくであった。
(なお、「ユエンナツバラ」と「オニオリ」については、やはり印象が強かったためか、故伊丹十三氏が名著「ヨーロッパ退屈日記」の中で取りあげている。同級生Kのおかげですでに知っていたぼくは、長じてこの本を読んだとき、我が意を得たりとばかりなんどもうなずいたものだった)

それでふと思いだしたことがある。空耳とは関係ないんだけど、やはりこのころはやったポップスで「二万四千のキス」という歌があった。
「好きになったらキスをしよう」といっているだけのじつに無内容な歌なのだが、サビの部分に大問題の箇所があったのだ。
「♪一秒のキスを一日つづければ二万四千〜 イェ〜〜〜イェイェイェイェイ〜」
ぼくは耳をうたがった。「イェイェイェイェイ〜なんてうかれてる場合じゃないだろう、その計算はおかしくないのかっ!」と思わずつっこんでいたのだが、そう思ったのはぼくだけではなかったらしく、この件は小学校でもおおいに話題になった。
「絶対におかしいよな」
「うん、まちがってるぞ」
「一時間は三千六百秒だから、かける二十四で八万六千四百が正しい答えだ」
というようなまっとうな意見が飛びかうなか、例の同級生Kだけは独自の見解を示した。
「ふむ、たしかにそのとおりだが、しかし、これは歌なのだからOKなのだ。これでいいのだ」
のちの「バカボンのパパ」のようなスルドイ指摘に、ぼくはまたしても深く深く納得したのであった。いまごろどこでどうしているのか、同級生K。

話をもどそう。
中学生になると、一世を風靡したのがビートルズだった。そしてビートルズの歌がまた、空耳の宝庫だったんだけど、きりがないのでここではふたつだけ例を示そう。
セカンドアルパムの「ウィズ・ザ・ビートルズ」の一曲目に、「It won’t be long(イット・ウォント・ビー・ロング=もうすぐだよ)」という歌が収録されている。冒頭から掛け合いで、
「♪イット・ウォント・ビー・ロング〜
イェー イェー イェー イェー イェー
イット・ウォント・ビー・ローング〜」
とテンポよく歌われていくのだが、これがぼくの耳にはなぜか、
「♪イモビロン〜 イェー イェー イェー イェー イェー ♪イモビローン〜」
ときこえてきて、その瞬間、頭の中にはビートルズの四人が谷啓の名ギャグ「ビローン!」をやっているシーンがチラつくのだった。いいのか、そんなんで。

もうひとつは、「リボルバー」に収録されている「エリナー・リグビー」だ。孤独の中、教会で死んだ女性エリナー・リグビーを歌いあげた哀切きわまるバラードで、まさに名曲中の名曲だ。
しかしそんな悲しい歌のなかにも空耳歌詞はひそんでいるのだった。エリナーを墓地に埋葬したのはマッケンジー神父といい、英語では「Father McKenzie(ファーザー・マッケンジー)」である。そしてポールが、
「♪ファーザー・マッケンジー」
と歌うその名前が、ぼくの耳には、
「♪はざまけんじー」
と聞こえてならなかったのであった。そしてそして、トツゼンだけど「パスワード幽霊ツアー」で重要な役割をもって登場した少年「間ケンジ」は、なにをかくそうここからとった名前なのでした。脱力したヒトがいたら、どうもスミマセン<(_ _)><(_ _)><(_ _)>。

なんてしょうもないことを書いているうちに、いつのまにか迎えた2012年。去年はいろいろと悲しいことも多かったけれど、今年こそはいい年になるように、みんな、がんばろう!
(*編集部・注 更新日は2011年12月27日ですが、通常の1日更新なので、このようなメッセージをいただいております!)
そういえば、今年の干支は辰だったよね。そうだ、こうなったら、「パスワード龍伝説」につづくドラゴンがらみのミステリー、なにか書いてみようかな。(*^_^*)

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