まずは先月の「ききまちがい」シリーズのつづきから。
酉の市(とりのいち)で有名な新宿花園神社のすぐ近くに、ゴールデン街(がい)という古い飲み屋街がある。混沌(こんとん)としたふんいきがぼくは大好きで、仕事が終わって夜になるとよくでかけていく。ちなみに、パスワードシーズの姉妹編 『レイの青春事件簿2 ビートルズ・サマー』にでてくる森崎町の「銀河小路(ぎんがこうじ)」というのは、このゴールデン街がモデルだ。
常連(じょうれん)になっている店はいくつかあるけれど、とくに「G」がお気に入りだ。この店のママのT子さんはプロの歌い手でもあり、ときどきロシアにでかけて新しい民謡(みんよう)を採集しては、ライブハウスや紀伊国屋(きのくにや)ホールでコンサートをひらいている。ともかくスーパーウーマンなのだ。
そんなT子さんがある日、いきなりこんなことをいいだしたからおどろいた。

ど、どうした、なにかあったのか、とアセるぼくに向かって、T子さんはつづけた。

痛い? 心が痛いのか? そうか、生きる意欲をなくすと歩くのもつらいのかと、納得しかけたとき、さらに、

へ? 一瞬ぽかんとしたあと、やっと気がついた。つまりぼくは、
「ぎっくり腰になってさ。 → 生きる意欲なくしてさ。」
とききまちがえたのだ。その後、店内が爆笑につつまれたことはいうまでもない。
さて、ゴールデン街にはほかの魅力もある。あっちの路地(ろじ)、こっちの店で、猫たちの姿をよく見かけることだ。
たとえば三番街の入り口の発泡スチロール箱の上では、巨大三毛美猫の「お嬢(じょう)」が、まるでつけもの石のようにゴロンとしているし、「M」という店の前になぜかあるたなには、白黒の兄弟猫がうずくまっていたりする。

↑これがケンシロウだ!
ぼくがとりわけごひいきにしているのは、「P」という店の飼い猫・ケンシロウだ。はじめていったとき、「ウニャン。」といって体をスリスリしてきて、ザラザラの舌で指をペロペロしてくれて以来すっかりファンになってしまい、週に1〜2回は通うようになった。
最近どうも原稿の進みがおそいのは、そんなことばかりしてるせいかもしれない。いっそ仕事場にもケンシロウみたいな子がいて、 執筆(しっぴつ)中にひざに乗ってくれたりすると、原稿にもはずみがつくような気がするのだが。
おしまいに、猫がでてくるおすすめの一冊を。
R.A.ハインラインの 『夏への扉』(ハヤカワ文庫)だ。ただし、ミステリーではなくてSF。話すとネタバレになってしまいそうなのでなにもいわないけど、ぜひぜひ読んでみてください。猫のピートに感涙(かんるい)!