パスワードシリーズ第1作目の『パスワードは、ひ・み・つ』の17ページ、マコトがキーボードで文字を打ちこむシーンで、ぼくはこう書いた。
アルファベットのキーはひらがなのキーよりずっと数がすくないから、文字を打ちこむのは「ローマ字入力」のほうがかんたんだ。
けれどもマコトは「ひらがな入力」をえらんだ。
ローマ字では、文章を書いているという気がしなかったからだ。
じつはこれは、ぼく自身の気持ちを書いたものだ。「うそ、Mさん、ひらがな入力なの?」とおどろかれることが多いのだが、ローマ字入力にはどうも抵抗があるのだからしかたがない。
さて、ひらがな入力で文を書いていると、ときどきコマった現象が起きる。
促音(そくおん)と拗音(ようおん)——小さい「っ」「ゃ・ゅ・ょ」を入力するときはシフトキーを押してからキーボードを打つ必要がある。ところがシフトキーが ワンテンポ遅れたためにそのまんまの文字、「つ」「や・ゆ・よ」になってしまうことがよくある。問題はそうと気づかずに、これをそのまま漢字変換してしまったときだ。すると、たとえばこんなふうになってしまう。
「学校」 → 「月校」
「小学生」 → 「使用学生」
「中学生」 → 「知勇学生」
まあこのくらいならカワイゲがあるのだが、しかし、こういうのはちょっとどうかと思う。
「編集者」 → 「変死勇者」
「編集長」 → 「変死悠長」
いちばんおどろいたのは、「自己紹介」のつもりで「じこしようかい」と打ちこんで変換したときだ。なんと、
となってしまい、パソコンの前でウケまくったことがある。
あと、これは「パスワード悪魔の石」でつかったネタだけど、
「マコトは……と叫んだ」 → 「マコトは……土佐犬だ」
これもひとりで大ウケだった。
「誤変換(ごへんかん)ネタ」は、ときどき読者のみんなからもメールで報告がくる。 最近の傑作は、NODOKAさんからのこんなメール——。
日本一大きな貝塚、千葉県の加曽利貝塚をあやまって「かそりかいずか」と入力して変換したら「過疎理解図化」となってしまった。あわててこんどは「かそりかいづか」と正しく入力したのに「過疎理解塚」となってしまった。
≪「加曽利貝塚」はそんなに理解力が過疎化しているのでしょうか?≫
とはNODOKAさんのコメントだ。うまいっ、ざぶとん一枚!
しかし誤変換といえばなんといっても、日本漢字能力検定協会が毎年実施している「漢字変換ミスコンテスト」である。抱腹絶倒(ほうふくぜっとう)の誤変換のオンパレードで、ともかく笑える。いくつか紹介するので、大笑いしてください。(カッコ内はぼくのコメント)
「言わなくったっていいじゃん」 → 「岩魚食ったっていいじゃん」
(でも岩魚より鮎のほうがいいな)
「地区陸上大会」 → 「チクリ苦情大会」
(そういう大会は参加しても楽しくないと思う)
「今年じゅうに埋蔵金を発掘したい」 → 「今年十二枚雑巾を発掘したい」
(そうか、徳川の埋蔵金は雑巾だったのか)
「いま海外に住んでいます」 → 「いま貝が胃に棲んでいます」
(その貝は何貝なのか? 胃だけにイガイ、なんてね)
「わたし出不精なんです」 → 「わたしデブ症なんです」
(う、うーむ、 なんだか身に覚えがあるような)
「うまくいかない画像サイズになった」 → 「馬食い家内が象サイズになった」
(馬食い家内! しかも象サイズ! どんな奥さんなのか? 謎だ!)
この「誤変換シリーズ」、いつかミステリーのトリックに使いたいと思うのだけど……でも、あんまりたいしたミステリーにはならないかも。(^_^;)