五月三十日。台湾に旅立ちました。
実は海外旅行は十年ぶり。
飛行機に乗っても、見るものすべて珍しく。
「うあ! ゲーム搭載? なつかしいソフトだなー、『上海』!」「おおー、入国書類の書き方がモニターに出てくる!」「機内販売カタログも見なくちゃ! 限定品があるからはずせないんだよなあ。」
興奮して遊んでいる間に、あっというまに台湾についてしまったのでした。
空港で担当のシャチさん、今回通訳としてついてくださる、中国語に堪能な8さんと待ち合わせ。三人でホテルに向かいました。
ホテルにはすでにT編集長と台湾版「若おかみは小学生!」を出してくださっている三采文化出版の関係者である、Cさんが待機してくださっています。
なにしろ今回の旅は取材の予定がびっちりで、山のようにおみやげを買うつもりのわたしとしては一分一秒も気を抜けません。
「どこに行きたいですか? 少しなら時間がありますが」
というCさんのご質問に、
「すぐに買い物に行きたい。」
「なにを買いたいですか?」
「チャイナえりの服と、名物からすみと、大勢のかたに配る小物などを50個ぐらい買いたい。」
と、はっきり目的を告げると、Cさんは目を丸くしながら、「50個も何を買うのですか?」と不思議そうでした。
「さ、行きましょう!」
ホテルはメジャーな地下鉄駅のすぐそばにあり、周りにはデパートだのショッピングビルだのが林のように建ってます。全部行きたいのですが、そんな時間はない。
五分ぐらい歩いていると、アジアンテイストなドレスが飾ってある一軒のブティック発見。
「あれだ! あそこに行きます。」
と早足で行き、即、チャイナえりの玉虫色・植物柄・シルクシャツを買い、ついでに柿のぬいぐるみが連なっている、カラフルな飾り物を発見。
「これはお祭りで使う物です。これを飾ればいいことばっかり起こるという縁起ものです。」
その言葉に縁起物好きのわたしは、ぐぐーっとテンションが上昇しました。
「これも買います。シャチさん、そんな一個だけの柿じゃ、いいことが一回きりだよ。あなたも五個つながりのやつ買いなさいよ!」
と、静かにしていたシャチさんに買い物を強制飛び火させました。するとその勢いに押されたのか、ブティックの方が「じゃあそれはもうサービスで、いいですよ。あげます。」と言いだし。大喜びで縁起物をいただいたのでした。
いや、もう、こんな勢いで買い物をするなんて、普段ありませんから、時間がないとか、ここでしか買えない、というのも、買い物心を燃えさせてくれてなかなかいいものです。
忙しくて自分が求めるものをよくわかってる真月ちゃんが買い物するときは、こんな感じなのかな? と思ったりしました。
そうこうするうちに、ホテルに三采文化出版の社長さんが来て下さいました。
実は社長さんに、
「台湾のセレブの方がどんなお暮らしをされているのか、お宅拝見をさせていただけないでしょうか? 真月ちゃんやあかねさんのセレブ描写の参考にさせていただければとてもありがたいのですが……。」
と、あつかましくも願い出たところ、快くOKして、車で迎えにきてくださったのでした。
社長さんが案内してくださったお宅は、想像を絶するものでした。
社長さんの住んでらっしゃる、マンションがあまりにも凄かったのです。
べ、ベルサイユ宮殿ですか? と問いたいような見事に手入れされた庭園を囲む、瀟洒な高層マンション……。
お部屋も豪華だったのですが、このマンションの施設たるや……。
最初に案内されたホールがとても広くきれいで、名画や花など飾られ、ソファがぽつん、ぽつんと置いてあるので
「わー。すごいですね。ホテルのロビーみたい。こんな広い玄関ホールがあったら、来客とかいいですね。」
と言うと、
「これは裏口です。」
といわれ、はあ??? 裏口???。
意味がわからなかったのですが、本当の正面玄関のロビーを見て、のけぞりました。
感心して見ていたさっきのロビーの十倍以上の広さだったのです。
それに、コンサートホール並みの高い天井に、「UFO?」と言うしかない、巨大なシャンデリアが下がっています。映画「未知との遭遇」のラストに出てくる巨大キラキラのマザーシップを連想します。
「こ。このソファ、ベルサーチだよ。こっちはMCM……。ブランドの特注のいすしか置いてないじゃない。」
そこで、一応、ブランドソファにみなで座って写真を撮るも、広すぎて「遠景」になってしまいます。
ほかにも案内していただいたマンション内施設が「温水室内プール」「フィットネスジム」「室内バスケットコート」「子どもの遊技場」「会議室」「映画の部屋」「カラオケルーム」「コンビニ(これだけは外の道沿いにあり一般人も買い物できます)」「奥様方が絵画など習い事をする部屋」「図書室」「単に余ってる部屋」など……。
庭園の中の噴水周りのベンチに腰掛け、興奮しすぎた頭を冷やします。
涼しい。暑いはずなのに、風が涼しい。立地条件や建て方の工夫などで、気温までセレブ対応ですごしやすくなっているのか……。
あまりにも普段とちがうこれらの環境に、現実感がなく呆然としてしまいます。
T編集長が「このマンションでは花火はあがらないのですか?」と冗談で聞いたら、本当にお正月にあがるそうでした。
われわれの想像をすべて超えたこの凄いマンションで、豪華な食事をご馳走していただき、みなで歌ったり、お酒を飲んだり……。
帰りも高級車でホテルまでおくっていただき、夢のような一日が終わりました。
真月ちゃん、あかねさん……。どうせなら今よりも、もっともっと上のセレブを目指してね……。わたしも、この取材を無駄にはしないよ……。などと思うのでした。
すっかり真月ちゃん体験をさせていただきました一日目はこれで終了。
翌朝、五月三十一日。
朝五時から起きて、早朝の街へ。目的はコンビ二です。
ファミリーマート、セブンイレブンがあります。
店内は日本のコンビ二とほぼいっしょです。おでんや肉まん、からあげなどを売っているコーナーがレジカウンターにあります。しかしそこにあるのは、見たことのない中華おでん! 中華まん!
「こ、この紫のうずまきの肉まんはなに? 紫芋?」
「うわー。卵でなにかをサンドしたこのよくわからないおでん、めっちゃおいしそうー!」
朝食前なので、食べるのはさすがにがまんしましたが、買い物は止まりません。
台湾限定キティ・パンダグッズ、焼き鴨入りや、香料煮豚入りの中華カップ麺、スープの素、また日本で買うと結構高い中華料理の香辛料なども、お安く小さい袋で売っています。それに化粧品も安かった! お土産用に大量買いです。
ぱんぱんにふくらんだビニール袋を手にホテルに戻ったきた私に8さんが、
「そんなにかさばるものを買って、トランクの中に入りますか?」
と心配してくださいます。
「大丈夫。このためにトランクの三分の一しか荷物を入れてきていないのです。」
「へー! それであんなに大きなトランクだったのか!」
みんなもう、これ以降、買い物に関して私の心配はしてくれなくなりました。そりゃそうですね! 言葉も通じないのに、針の穴でもくぐりぬけて買い物に行こうとするその姿に、なんの手助けも必要ないと思いますわね。