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2012年7月13日更新
わたしが作家になったわけ

はやみねかおるインタビュー【後編】

子どもたちにもわかりやすい物語を

―― 先生になってはじめて教壇に立ったとき、どんな気持ちでしたか?

いまでもよくおぼえているんですけど、はじめて担当したのは4年生のクラスで、全部で39人。とにかく緊張しましたし、授業というものをどう進めればいいのかよくわかっていませんでしたから、職員室で教育技術の指南書を読んだりしていましたね。結局、教員生活は14年ほどつづけることになります。

―― 一度はやめた小説を、ふたたび書きはじめたのは?

教員というのは小説を書きながらやれる仕事じゃないって理解してましたから、本当にすっぱり辞めるつもりだったんです。でも、たった半年でまた物語を書くことになりました。というのも、僕はとても授業が下手くそな先生で、45分間の授業がなぜかいつも40分で終わってしまうんです(笑)。そこで、あまった5分をつかって、子どもたちに短い物語を読み聞かせることにしました。星新一さんのショートショートなどを、黒板に絵を描きながら読んだのですが、これがものすごくウケたんです。

―― 子どもたちにとって、お楽しみのひとときだったわけですね。

そうですね。でも、小学校4年生にとってわかりやすい内容で、しかも5分くらいで読める短編小説というのはそう多くなくて、やがてネタがつきてしまいました。そこで、ためしに自分が昔書いた物語をいくつか読んでみたら、子どもたちから「今日のはおもしろくなかった」と正直にいわれてしまって……(苦笑)。彼らにしてみれば、誰が書いた作品かなんて知らないわけですから、すごくフェアな評価ですよね。それが悔しくて、“だったらおもしろかったといわせてやろうじゃないか!”と闘志に火がついてしまい、子ども向けの童話を夜な夜な書きはじめることになるんです。

―― 兼業作家生活のはじまりですね。

この当時というのは、ちょうど綾辻行人さんの『十角館の殺人』が売れだしたころでした。僕も夢中になって読んでいましたけど、こういう物語が書店で飛ぶように売れる時代がきたのか、と興奮したものです。だって、殺人事件が起きてその謎が少しずつ解き明かされていく……というのは、まさしく僕がいちばん好きな物語のパターンでしたから。

学校の先生からプロの小説家へ……

―― それにしても、先生をやりながら毎日物語を考えるのは、たいへんな作業だったのでは?

ものすごくたいへんでしたよ! だからそのうち、短編をたくさん書くのではなく、ひとつの長編を少しずつ読み聞かせる、連載のような形をとるようになりました。これなら、その日の子どもたちの反応を見ながら、みんなが喜びそうな展開にアレンジしながらつづきを書くことができますからね。そして物語が完結したら、手書きの原稿を印刷してとじて、子どもたちに配っていました。

―― クラスで読み聞かせるだけでなく、プロの小説家としてデビューすることになったのは?

5年生のクラスを担当したときに、子どもたちが何事にもいまひとつ真剣味を持てていないことに気づいたのがキッカケでした。勉強でも運動でも、ダメだったらまたやればいいや……といったどこかあまい気持ちが目について。そこで、真剣勝負というのがどういうものか身をもって教えるために、「これまで書いた作品を、講談社の新人賞に送る。落選したら、先生はもう二度と小説は書かん」と宣言したんです。これがデビュー作となった『怪盗道化師』(かいとうピエロ)でした。

―― 『怪盗道化師』も、もともとは教え子たちのために書いた物語だったんですね。

2年生のクラスを担当したときに書いた「怪盗ピエロ」という作品がもとになっています。本当は、まさか受賞できるとは思っていなかったので、びっくりしましたね。“これはちょっとカッコ良すぎたかな?”とも思いましたけど(笑)。

―― 子どもたちはみんな、先生が小説家だということを知っていたのですか?

図書室に僕の本が置いてある学校もありましたし、あるときからは自分から言うようにもしていました。でも、少なくとも学校にいる間は“はやみねかおる”というペンネームではなく、あくまで本名で先生をやってるわけですから、とくに影響はなかったですね。「本を書いてる」と言っても、みんな、あまりピンときてなかったのかもしれません(笑)。

―― そして今日までの間に、夢水清志郎や怪盗クイーンといった人気キャラが誕生しました。はやみね先生の作品を読んで、小説家になりたいと思うようになった読者も大勢いると思います。

本当に僕は運が良かったですよね。僕より才能があって、もっとがんばっている人は他にもたくさんいると思いますから、僕はとにかく恵まれていると思います。小説家をめざす人に伝えたいのは、とにかく「ガッツだ!」ということ。もし才能が足りていなかったらガッツしかないし、ガッツがなければ書きつづけることはできません。
(おわり)

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