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2010年8月13日更新
清水義範の「学校よりおもしろい社会科」
みんなは、「社会」の授業って、おもしろいかな? 暗記が多くて苦手とか、よくわからなくってむずかしいっていう人もいるんじゃないかな?
でも、ほんとうは、社会って、みんなの暮らしすべてのことをいうんだよ。テストにはでなくても、テレビドラマ「天地人」の武将の名前も社会だし、夕ご飯のお肉はオーストラリアから来たんだってわかるのも、社会なんだ。
そんなわけで、「テストにはでなくてもおもしろい社会科」っていうのを、清水義範先生といっしょに楽しんでみよう!

清水義範の「学校よりおもしろい社会」
この連載が本になりました!

『清水義範のイッキによめる! 学校よりおもしろい社会』
清水義範/作 西原理恵子/絵

青い鳥文庫サイトの好評連載が本になりました! 
歴史や地理を、おもしろ授業で語りつくします。あなたの好奇心を刺激する、読んでおもしろい社会科の本が登場です!

小学中級から
定価:1050円(税込)

「学校よりおもしろい社会科」の先生
清水義範/文
1947年、愛知県うまれの小説家。たくさんの大人向け小説や日本語に関する本を書くかたわら、『おもしろくても理科』『どうころんでも社会科』『いやでも楽しめる算数』(いずれも講談社)といった楽しい学問の本も書いています。

西原理恵子/絵
まんが家。清水義範先生とコンビを組んで、さし絵を描いた本も多数。新聞で連載している「毎日かあさん」はテレビアニメにもなっています。
「学校よりおもしろい社会科」の先生
「学校よりおもしろい社会科」時間割
一時間目 社会科のおもしろさってなに? 前編 2009年 7月15日掲載!
後編 2009年 8月14日掲載!
二時間目 米はどこからきたのか? 前編 2009年 9月15日掲載!
後編 2009年 10月15日掲載!
三時間目 邪馬台国はどこにあったのか? 前編 掲載終了
後編 掲載終了
四時間目 道はどうしてあるのか? 前編 掲載終了
後編 掲載終了
五時間目 山があると何がおこるか? 前編 掲載終了
後編 掲載終了
六時間目 ユートピアはどこにもないの? 前編 掲載終了
後編 掲載終了

「学校よりおもしろい社会科」時間割
さあ、「学校よりおもしろい」授業のはじまり、はじまり〜
「学校よりおもしろい社会科」の先生
一時間目「社会科のおもしろさって何?」

◆社会科は暗記課目だろうか?
 こんにちは。この「一日社会科教室」に、よく来てくれました。私は、この教室の先生の清水っていうおじさんです。
 えーとね、ここは普通の小学校とはちょっとちがう教室です。義務教育の学校ではなくて、何をやるところなんだろう、という好奇心で集まってきたきみたちと、まるまる一日かけて社会科の勉強をする場所です。普通の学校と同じように、四時間目までやって、そこで給食を食べて、そのあと六時間目まであるんだけど、その六時間が全部社会科の授業です。そういう、どとうの社会科づくめの一日になります。

 さて、ここからもう少し親しい口調でしゃべろうか。
 でもね、そんなにいやな教室ではないよ。先生はさっき、社会科の勉強をする、と言ったけど、かた苦しくて楽しくない勉強をガリガリやる気はないんだ。勉強っていう感じじゃなくて、社会科って実はおもしろい教科なんだよ、ということをみんなに伝えたいだけ。へーえなるほど、と思えるような授業をして、みんなを社会科好きにしたいと思ってるんだ。

 だけどその前に、ちょっときいてみよう。みんなは社会科が好きかな。社会科はおもしろいなあ、と思っているのかな。調べてみようね。この中で、社会科が好きだ、っていう子は手をあげて。えーえ、これだけか。かなり少ないなあ。
 では、社会科はどっちかっていうと好きじゃない、という子は手をあげて。うわあ、かなりの子が社会科は好きじゃないんだ。どうして社会科は人気がないんだろうなあ。

 意見をきいてみようね。社会科は好きじゃないってほうに手をあげた子で、えーと、山田実くんにきこう。山田くん、どうして社会科が好きじゃないんだい。
山田くん あのね、社会科ではいろんなことを暗記しなきゃいけないから、やだ。歴史の年号とか、国民の三大義務とか、どこかの県の特産物とか、どうでもいいことを丸暗記するのが社会科で、すっごく面倒くさいんだもん。だから、ナクヨウグイス、ってきいただけで、ゾゾゾッとしちゃう。
 それはかなりのアレルギー状態だなあ。ゾゾゾッとしちゃうのか。先生の考えではね、社会科は暗記科目じゃないと思うんだ。確かに、この事件は何年におこったでしょう、という問題が出ることもあって、めんどくさいなあ、と思うかもしれないけど、そういう年号が社会科でいちばん重要なことではないんだ。社会科っていうのはね、人間はどのように生活しているのか、ということを知って考えていく教科なんだよ。そして、昔はどうだったけど、だんだん変ってきて、今はどうなってるのか、ということを考えるんだ。

 でも、ここではその話に深入りするのはよそう。まずは、みんながどう感じているかを知らなきゃね。だから、もっと意見をきこう。社会科のこういうところがおもしろくないんだ、という意見のある人、ほかにいないかな。あっ、いたね。あなたは海野めぐみさんか。海野さんは社会科のどういうところが嫌いなの。
海野さん すごく嫌いということはないんだけど、社会科ってなんの役にも立たない勉強で、やらなきゃいけない理由がわかりません。たとえば国語だったら、新しい漢字を知ってむずかしい本も読めるようになるし、算数だったら計算ができるようになって、買い物とか、お店の経営とかもできるようになるけど、社会科で習うことは生活とはなんの関係もないんです。鎌倉時代がいつはじまったのかを知っていても、生活の中でひとつも役に立たないと思います。
山田くん そうだ、そうだ。社会科はなーんにも役に立たないもーん。
イラスト1  なんだ山田くんも海野さんの意見に賛成か。
 二人とも、社会科はいくら勉強したって、なんの役にも立たない、と思っているわけだ。さて、それは本当なんだろうか。
 先生は思うんだけど、どうも社会科というのは、何を習っているんだかわかりにくい教科なんだよね。社会科といえば、地理と、歴史と、公民ってことになるんだけど、その三つのことをバラバラに習っていても、全体で何をやっているのかどうもはっきりしないんだ。勉強したってなんの役にも立たない、という海野さんの感想は、そういう正体のわからなさから出てくるんじゃないかと、先生は思うんだけどな。

 だから考えてみよう。社会科って何を勉強する教科なんだろう。その答えはね、教科の名前の中にちゃんとあるんだよ。だってほら、社会科っていう名前じゃない。だから、社会科で勉強するのは社会のことなんだよ。社会ってどうなっているんだろう、ということを勉強するのが社会科なんだ。
◆人間だけが社会を作っている
 でも、そう言われてもまだピンとこないよね。社会ってなんだろう、というのがよくわかっていないんだから。さてそこで、社会とはどういうものなのかを調べてみよう。それはむずかしいことじゃない。言葉の意味がわからない時は、国語辞典を引いてみればいいんだ。みんなの中に国語辞典を持っている人はいないかな。
 ああ、海野さんが国語辞典を持っているのか。じゃあ、「社会」って言葉を引いてみてよ。見つけた? それでは、「社会」にどういう説明がしてあるか、立って読んでみて。
海野さん はい。社会。人間が集まって共同生活を営む、その集団。家族、村落、会社、階級、国家などが主な形態。
 はい、ありがとう。みんな、わかったかな。社会というのは、人間が集まって共同生活をしている、その集団なんだって。人間が共同生活をする、というところがポイントだ。ただ人間が大勢いるだけの、たとえば混んでるデパートの客全員、みたいな集団は社会とはいわないんだね。それはたまたま人が多い、というだけだから。そういうのじゃなくて、共同生活をしていることが決め手だよ。つまり、みんなで協力してひとつのことをするんだ。そのためには、みんなで相談してやり方を決めたり、役割を分担したりするだろう。そういう集団が社会なんだ。家旅や、村や町や、会社や、国なんてのが社会。野球のチームや、同じクラブ活動のメンバーなんかも、小さいけど社会だ。

 で、人間の集団だってことが重要だよ。人間以外の動物で、社会を作っているものはいないんだ。動物のことをよく観察していくと、まれに、社会に似たものを作っているものがいないことはない。ニホンザルなんかは群れを作っていて、群れではボスがトップに君臨していたりするからね。でも、それは厳密な意味で社会と呼べるほどのものじゃないんだよね。みんなで相談して共同生活をしているわけじゃないから、あれを社会とはいわないんだ。
山田くん 先生。アリやハチはどうなの。アリには女王アリがいて、ハチには女王バチがいて、それを中心にして大きな巣を作るんだよ。そういうのって、社会じゃないの。
 山田くん、とてもするどい意見だね。アリとかハチのことをよく知ってるんだ。
山田くん 昆虫のこと好きだもん。アリは、女王アリが一匹で、そのほかにたくさんの働きアリがいるんだよ。それって仕事を分担してるから社会じゃん。
 アリやハチは、社会によく似た集団で生きているんだ。それは本当だよ。だけど、アリやハチは生まれつき役割が決まっていて、ただ本能のままに役割をはたしてるだけなんだ。相談して共同生活をするのとは、ちょっとちがうんだね。だから、本当の社会とはちがうんだよ。

 別の言い方をするとね、すべての動物の中で、社会を作って生きているのは人間だけなんだ。そのことの大きな意味がわかるかな。もし社会がなかったら、人間は一人一人バラバラに生きていくことになるよね。自分が食べる食料は自分でとるか作るかしなきゃいけない。自分の住む家も自分で作る。服だって自分で作る。子供から大人に育っていくのだって、自分一人でやらなきゃいけない。そういうふうだと、毎日生きていくのに必死で、ギリギリ生きているだけでいっぱいいっぱいだよね。ちょっと弱い者は死んでしまうかもしれない。

 ところがね、人間は、集団で協力することを知った動物なんだ。おれは食料をとるのが得意だ。お前は家を建てるのがうまい。だからお前は村の人間の家を建てろ。そうしたら食料を分けてやる。そういうふうに、相談して仕事を分担するわけだよ。このやり方だとね、一人ですべてをやって生きていくのにくらべて、たくさんのことができるんだ。それって、みんなもよく知ってることだろう。一人じゃ何もできないけど、みんなで力を合わせれば大きなことができる、っていうやつだよ。

 そういうふうに、みんなで力を合わせることが、社会を作って生きるということなんだ。そして、人間だけは社会を作って生きるおかげで、バラバラに生きるよりは大きな仕事をすることができたんだよ。たとえば、集団で農業をしたりするのもそれだ。お寺や神社のような大きな建物を作る大工事をするためにも、集団が力を合わせる必要がある。商業のためにも、多くの人が力を合わせなければならない。それから、社会には兵隊が必要な時もあって、兵隊の大将からいちばん下っぱの者までが力を合わせなきゃいけない。

イラスト2  集団の運営をどうやればいいんだろう、という問題があって、それを考えるのが政治家だ。そういう専門家も出てくる。また、学問のことばかり考えるという学者も出てくる。そんなふうに役割分担した人間が効率よく働くから、バラバラに生きているより大きな仕事ができるってわけだ。その結果、人間は文明を持てたんだよ。
 石器を発明したり、土器を作ったり、青銅器や鉄器を作るようになったりして、人間は文明を進歩させることができたんだよね。そのことは古代人についていえるだけではなくて、今も人間は社会生活をするおかげで進歩し続けているんだ。

 わかってきたかな。人間だけが社会を作るってことのおかげで、人間は大いに栄えた動物になっているんだよ。そしてその、社会のことを知ろうっていうのが、社会科なんだ。ぼくたちの生活とはなんにも関係ない、面倒なことを覚えるだけの教科だなんて、とんでもないまちがいなんだ。社会のことを考えるのは、人間の生き方を考えるっていうことでもあるんだよ。
(一時間目 はじめの半分 終わり)
「学校よりおもしろい社会科」の先生
イラスト3 社会科ってそもそもどんな教科なのか、どんなところがおもしろいのか、ちょっとずつわかってきたよね!

次回は一時間目のつづき、「社会のことを考える」っていうのがどういうことなのか、具体的でおもしろい例をあげて清水先生が教えてくれるよ。どうぞお楽しみに!
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