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2009年8月14日更新
清水義範の「学校よりおもしろい社会科」
みんなは、「社会」の授業って、おもしろいかな? 暗記が多くて苦手とか、よくわからなくってむずかしいっていう人もいるんじゃないかな?
でも、ほんとうは、社会って、みんなの暮らしすべてのことをいうんだよ。テストにはでなくても、テレビドラマ「天地人」の武将の名前も社会だし、夕ご飯のお肉はオーストラリアから来たんだってわかるのも、社会なんだ。
そんなわけで、「テストにはでなくてもおもしろい社会科」っていうのを、清水義範先生といっしょに楽しんでみよう!

清水義範の「学校よりおもしろい社会」
この連載が本になりました!

『清水義範のイッキによめる! 学校よりおもしろい社会』
清水義範/作 西原理恵子/絵

青い鳥文庫サイトの好評連載が本になりました! 
歴史や地理を、おもしろ授業で語りつくします。あなたの好奇心を刺激する、読んでおもしろい社会科の本が登場です!

小学中級から
定価:1050円(税込)

「学校よりおもしろい社会科」の先生
清水義範/文
1947年、愛知県うまれの小説家。たくさんの大人向け小説や日本語に関する本を書くかたわら、『おもしろくても理科』『どうころんでも社会科』『いやでも楽しめる算数』(いずれも講談社)といった楽しい学問の本も書いています。

西原理恵子/絵
まんが家。清水義範先生とコンビを組んで、さし絵を描いた本も多数。新聞で連載している「毎日かあさん」はテレビアニメにもなっています。
「学校よりおもしろい社会科」の先生
「学校よりおもしろい社会科」時間割
一時間目 社会科のおもしろさってなに? 前編 2009年 7月15日掲載!
後編 2009年 8月14日掲載!
二時間目 米はどこからきたのか? 前編 2009年 9月15日掲載!
後編 2009年 10月15日掲載!
三時間目 邪馬台国はどこにあったのか? 前編 掲載終了
後編 掲載終了
四時間目 道はどうしてあるのか? 前編 掲載終了
後編 掲載終了
五時間目 山があると何がおこるか? 前編 掲載終了
後編 掲載終了
六時間目 ユートピアはどこにもないの? 前編 掲載終了
後編 掲載終了

「学校よりおもしろい社会科」時間割
さあ、「学校よりおもしろい」授業のはじまり、はじまり〜
「学校よりおもしろい社会科」の先生
一時間目「社会科のおもしろさって何?」
◆社会生活の理屈を考えていく
イラスト1  社会を作って生きている人間が、どういう生活をしているか、を考えるのが社会科なんだけど、この言い方じゃぼんやりしていてよくわからないだろうな。だから、具体的な話をしよう。先生が実際に体験した体験談だ。

 先生はね、たまに海外旅行に行くのが趣味なんだけど、この話はイランという国へ行った時のことだ。イランというのはアジアの西のほうにあるイスラム教を信じる人たちの国だよ。古くから文化のある国なんだけど、国のほとんどが高原で、草や木があまり生えていない乾燥した土地なんだ。

 そのイランの首都のテヘランという都市で、先生が参加していたツアーの団体は、イラン人の普通の人の家庭を訪問した。普通の人の生活ぶりを見せてもらうために、ある一軒の家に頼んであったんだ。
 ツアー会社からその家の人にはお礼のお金が払ってあるんだけどね。でも、お礼のお金だけでは足りないんじゃないかな、と心配しちゃうくらいに、料理をどっさりと出してくれた。お菓子もいっぱい出してくれたよ。

 それで、まずこれを言っておかなきゃいけないけど、テヘランは国の中央部の高原にある都市で、近くに海はないんだ。あんまり水の豊かなところじゃない。
 そして、中央アジアや西アジアの国のほとんどが同じなんだけど、よく食べる肉は羊(ひつじ)肉なんだ。パンや野菜も食べるけど、肉といえば羊が普通で、串(くし)にさして焼いて食べることが多い。

 ところがね、そのイラン人の家では、日本人のお客を喜ばそうと考えて、魚をフライのような料理にして出してくれたんだ。日本人が魚をよく食べるということは知っていたんだろうね。それで、イランへ来て何日も羊肉ばっかり食べさせられて、あきちゃってるだろうと考えて魚にしてくれたってわけだ。そういう、気配りのある親切だったんだよ。
 テヘランの近くに海はないんだから、多分川の魚だろうと思う。ちょっと見たことのない魚だった。

 さてそこで、とてもおもしろいことがおこった。日本人ツアー客の中の一人の女性が、イラン人のお母さんにこうきいたんだ。
これはなんという魚ですか。
 イランではペルシア語が使われているんだけど、通訳にペルシア語でそうきかれたイラン人のお母さんは、こまったように首を横に振ってこう答えた。
魚です。
 この話のどこがおもしろいかわかるかな。ひとつはね、日本人はどこで魚を見ても同じことをきく、というのがおもしろいんだ。
 先生は海外のいろんな国へ旅行で行ってるけど、どこへ行っても、魚料理が出てくると必ず誰かがきくんだ。
「これはなんという魚ですか。」って。
 魚料理を見て、誰もそれをきかなかったことは一度もないんだよ。つまり、日本人はやけに魚の名前を知りたがるんだよね。そこで、誰かが代表してきくんだ。

 そしてもうひとつおもしろいのは、海が近くない乾燥した気候の国なんかだと、イランのお母さんと同じような答えが返ってくることが多い。
「どういう魚ですか。」
「魚です。」
 というやりとりになるんだね。

イラスト2  どういうことだかわかるかな。日本のように国を海で囲まれていて、漁場にも恵まれていて、いっぱい魚を食べる国では、魚のうちの何なのか、というのが重要な問題だってことだね。タイなら高級魚でうまいな、とか、イワシは安くて庶民的だな、とか判断できるんだ。

 ところが、海が近くになかったりして、あまり魚を食べないところ、食べても一年に一度か二度、というようなところでは、魚の種類の区別までしやしない、ってわけだよ。ただ、これは魚、とだけ思っているんだ。

 わかるだろう。社会生活には、知ってみればなるほどって思える筋の通った理屈があるんだよ。言いかえると、社会生活にはちゃんと科学的な原理が働いているんだよ。日本人はなぜ魚の名前をきくのか、ということから、なぜ泥棒をすると警察につかまるのか、ということまで、我々の生活にはちゃんと理屈の通った理由があるんだ。その理屈を知ろう、というのが社会科なんだよ。
◆人間の生活の科学
 先生が紹介したイランの魚料理の話からは、人々の生活のしかたは、土地ごとにちがっているんだなあ、ということがわかるよね。そして生活がちがえば、ものの感じ方や、考え方もちがってくるんだよ。そういうことには、ちゃんと理由があってそうなってるんだ、とわかることが、社会科がわかるってことなんだ。

 たとえば、ものすごく暑い地方で生活する人々と、ものすごく寒い地方で生活する人々とでは、いろんな点で生活がちがうっていうのは想像できるだろう。わかりやすいことでは、着るがまるでちがっているよね。寒いところの人は、毛皮なんかのついた暖かい服を着るだろう。下着なんかでも、ぶ厚くて暖かいのを着るよね。

 それに対して暑い地方の人は、毛皮の服なんか着ないよね。なるべく薄っぺらで、風通しのいい半そでのシャツ一枚とかで生活しているわけだ。

イラスト3  それから、寒いところと暑いところでは、だって作り方がちがうんだよ。寒いところの家は窓が二重ガラスになっていたりして、家の中の熱を外に逃がさないようになっている。そのほうが暖房の効率がいいからね。それに対して、暑いところの家はすき間が多くて風通しがいいように作ってある。床下を高くしたり、川の近くに家を作ったりするだろう。

 そういうことって、考えてみれば当然のことだよね。つまり、生活するところの自然環境や、地形や気候によって生活ぶりがちがってくるってわけだよ。そしてまさしく、そういうことを学んで、わかってくるのが社会科なんだ。

 ここでは、暑い地方と寒い地方のちがいを考えたけど、環境のちがいはそれだけじゃないよね。に近いところなのか、の中なのかでも生活は大きくちがっていると想像できるだろう。海の近くの人はよく魚を食べるだろうけど、山の中の人はそうはいかない、とかね。

 がよくふって、には水が多く、の緑も豊かな地方なら、農業がやりやすいよね。ところが、雨がほとんどふらず、草や木もろくに生えない砂漠の地方では農業はできない。そういうところが本当にあって、そんなところにも人間は住んでいるんだからね。

 少しわかってきただろう。社会科で地理をやるのは、そういうことを考えるためなんだよ。地形や気候がわかると、そこでの生活がわかってくるからね。

 だけど、生活に影響してくるのは地形や気候だけじゃない。時代によって変ってくることもよくあるわけさ。さっき、海の近くに住む人は魚をよく食べ、山の中に住む人は魚をあまり食べないっていったけど、それは昔のことで、今の日本にはあてはまらないよね。今は、保冷車といって、荷台が冷蔵庫になってる車で魚を運ぶから、山の中のスーパーだって新鮮な魚を売ってるわけだ。江戸時代にはそこの人は干物にした魚しか食べられなかったけど、現代では刺身だって食べられる。時代によって生活は変ってくるんだね。だから歴史を勉強するんだよ。時代がどういうふうに変化してきて、我々の生活はどう変ってきたかを知るためにね。

 そしてまた、政治のやり方も知っとかなきゃいけない。たとえばひとにぎりの王様や貴族だけが権力を持っていて、国の富を独占していい生活をして、一般庶民は貧乏で苦しんでいる、なんて国があるとしようか。そういう国で、ついに国民の不満が爆発して革命がおこって、王や貴族がたおされる、なんてことも歴史上にはよくあったんだよ。その結果、政治がどう変って、人々の生活がどうなったのかを知ることは、まったくもって生活のあり方を考えてるわけだよね。

イラスト4  この時間に考えたことをまとめてみることにしよう。人間は社会を作って生きていて、そのおかげでほかの動物よりは栄えている。だからその社会のことを知っておこう、というのが社会科なんだって言ったよね。

 それは別の言い方をすると、我々の生活はどういう理由があってこうなっているのか、を知ることでもある。雨がよくふるから農業がしやすかったのだ、とかね。ところがこの百年ぐらいは工業化が進んで、ほかの産業でお金を儲けて、食料は外国から買えばいいということになってきて、めっきり農業国ではなくなってきちゃった、なんて場合もある。日本はその道をたどっているんだ。

 そんなふうに、なるほど、だから我々の生活はこうなっているのか、というのを知っていくのが社会科なんだ。それがわかってみれば、社会科は私たちの生き方に少しも関係してこない、ただめんどうなことを暗記するだけの教科だなんて、大まちがいだってことがわかるだろう。

 社会科は決してめんどうな教科じゃないんだ。生活がどうしてこうなっているのか、たとえば日本人はなぜ家の中では靴をぬぐのかなんてのは、すごく身近で、おもしろい疑問じゃないか。
 そういう身近なことから、世界中のことまで、そして今のことから、昔のことまで知っていこうっていう、おもしろ生活探検、みたいなことが、実は社会科で学ぶことなんだ。

 だから山田くんも、ナクヨウグイスのことなんか忘れちゃってもいいよ。海野さんも、社会科と生活がつながっているってことが、きっとわかってくると先生は思う。
 社会科ってなんだ、というのを考えたところで、一時間目の授業は終りとしよう。
「学校よりおもしろい社会科」の先生
イラスト5 身近なことから世界のことまで、そして、今のことから昔のことまで、ぜーんぶ知っていこうっていうのが社会科なんだね!

さて、次回の2時間目では、みんなにとっても一番身近な、食べ物のことを考えていくよ。「日本人の主食は米」と言われているけど、それってなんで? それって本当? どうぞお楽しみに!
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