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2009年9月15日更新
清水義範の「学校よりおもしろい社会科」
みんなは、「社会」の授業って、おもしろいかな? 暗記が多くて苦手とか、よくわからなくってむずかしいっていう人もいるんじゃないかな?
でも、ほんとうは、社会って、みんなの暮らしすべてのことをいうんだよ。テストにはでなくても、テレビドラマ「天地人」の武将の名前も社会だし、夕ご飯のお肉はオーストラリアから来たんだってわかるのも、社会なんだ。
そんなわけで、「テストにはでなくてもおもしろい社会科」っていうのを、清水義範先生といっしょに楽しんでみよう!

清水義範の「学校よりおもしろい社会」
この連載が本になりました!

『清水義範のイッキによめる! 学校よりおもしろい社会』
清水義範/作 西原理恵子/絵

青い鳥文庫サイトの好評連載が本になりました! 
歴史や地理を、おもしろ授業で語りつくします。あなたの好奇心を刺激する、読んでおもしろい社会科の本が登場です!

小学中級から
定価:1050円(税込)

「学校よりおもしろい社会科」の先生
清水義範/文
1947年、愛知県うまれの小説家。たくさんの大人向け小説や日本語に関する本を書くかたわら、『おもしろくても理科』『どうころんでも社会科』『いやでも楽しめる算数』(いずれも講談社)といった楽しい学問の本も書いています。

西原理恵子/絵
まんが家。清水義範先生とコンビを組んで、さし絵を描いた本も多数。新聞で連載している「毎日かあさん」はテレビアニメにもなっています。
「学校よりおもしろい社会科」の先生
「学校よりおもしろい社会科」時間割
一時間目 社会科のおもしろさってなに? 前編 2009年 7月15日掲載!
後編 2009年 8月14日掲載!
二時間目 米はどこからきたのか? 前編 2009年 9月15日掲載!
後編 2009年 10月15日掲載!
三時間目 邪馬台国はどこにあったのか? 前編 掲載終了
後編 掲載終了
四時間目 道はどうしてあるのか? 前編 掲載終了
後編 掲載終了
五時間目 山があると何がおこるか? 前編 掲載終了
後編 掲載終了
六時間目 ユートピアはどこにもないの? 前編 掲載終了
後編 掲載終了

「学校よりおもしろい社会科」時間割
さあ、「学校よりおもしろい」授業のはじまり、はじまり〜
「学校よりおもしろい社会科」の先生
二時間目「米はどこから来たのか?」 前編

◆日本人の主食は米
 二時間目には食べ物のことを考えてみよう。食べ物のことを考えるのは楽しいだろ。
山田くん 食べ物の話ばっかりじゃん。
 山田くんか。そうだっけ。
山田くん 一時間目にも、日本人は魚をよく食べるけど、イラン人は羊肉を食べるっていう話をしたじゃん。
 うん。ちゃんとその話が頭に入っているのはいいね。確かにその話をしたけど、ここでは主食のことを考えたいんだ。肉や魚はおかずだよね。おかずではなく、日本人は主食として何を食べているかだ。わかる人はいるかな。では、海野さん答えて。
海野さん 日本人の主食はお米だと思います。
 はい。それはとてもまともな答えだよ。日本人は米を食べる、というイメージが確かにあるよね。細かく見ていけば、日本人は米だけを主食として食べるわけじゃなくて、ほかのものも食べるけどね。
山田くん パンも食べるし、うどんも、ラーメンも食べるよ。
 山田くんの言う通りだ。今の三つは、どれも小麦を粉にして作ったものだね。だから日本人は小麦も食べている。だけど、日本人と米の関係はとても結びつきが強くて、お米は特別、っていう感じがあるよね。そもそも主食と副食のことを、ごはんとおかず、っていうんだもんね。日本人の主食はごはん、つまり米だよね。

 ちょっと話は変わるけど、江戸時代には全国に大名(だいみょう)の治める藩(はん)があったのは知っているよね。その藩の経済力を言うのに、五万石(ごく)だとか、十万石なんて、(こく)という単位を使っていたんだよ。尾張藩(おわりはん)は六十二万石だ、なんてふうにね。

 それで、その石というのは、米の量をはかる単位なんだ。今は使われていない単位だけれど、一石は約百八十リットルだそうだ。

イラスト1  そういう米の量の単位で藩の経済力を言ったわけで、つまり、五万石の藩というのは、その藩の領地の中で五万石の米が収穫できるという意味なんだ。
 そして、その藩につかえる武士たちの給料も、石であらわした。百石取りの武士とか、千石取りの武士なんてふうにいったの。

 なぜ、武士の給料が米の量で表現されたのかというと、もともとは、給料として本当にそれだけの量の米がもらえたんだね。つまり給料は米の現物払いだったんだ。

 もちろん、人間は米だけあっても生きていけないから、米を売ってお金にかえて、そのお金でほかのものを買って生活したんだけどね。それで、実際にはだんだんと、米ではなくてお金で給料をもらうようになったりしたんだけど、あの人は千石取りの武士だ、という言い方はずっと残ったんだ。

 このことからわかるのは、江戸時代の人にとって米は、給料そのもので、お金と同じ意味を持つもの、という感じだったんだね。
 そういうふうに、日本人にとって米はいちばんの主食だったんだ。

 ただし、そうはいっても江戸時代に日本中の人が満足に米を食べられたわけではない、ということも知っておこう。武士は米を食べられたかもしれないけど、貧しい農民などは、自分たちが米を作っているのに、それを年貢(ねんぐ)で取られて、米をあまり食べられなかった。なぜかというと、日本中の人間が十分に食べるだけの量の収穫がなかったからなんだ。日本で、国民のすべてが食べるだけの米が生産できるようになったのは太平洋戦争よりあとのことで、今から五十年ぐらい前のことなんだ。それより昔は、米を愛しているんだけど、貧しい人はやむなく別の物を食べていたんだ。

 そして、米を十分に食べていい時代になってからは、今度は逆に、いろんなものを食べたほうが楽しい、というぜいたくから、米以外のものも食べるようになっているんだね。最近では一人あたりの米の消費量は昔より少なくなっているんだ。

 そういうわけで、昔は米が十分に収穫できなかったから、今はいろんなものを食べたほうが楽しいから、という理由で米以外のものも日本人は食べている。小麦の話はもう出たね。パンは江戸時代には食べなかったもので明治よりあとに食べるようになったものだけど、うどんは古くから食べていた。最近ではスパゲティも食べるよね。ほかに、米以外で食べるものはなんだろう。
山田くん そばを食べるじゃん。
 そうだね。そばはそばの実を粉にして、めんにして食べるものだ。
海野さん いもも食べます。
 その通りだ。いもをおかずとして食べることもあるけど、貧しい人たちは主食のように、それを食べて生きぬいたってこともあるんだね。それから、豆類も、米が足りない時に米のかわりに食べたものだったといっていいだろう。特に大豆は、あまり主食にするものではないけど、日本人にとって大切な食べ物だ。みそも、しょうゆも、とうふも、納豆も、すべて大豆で作るんだからね。

イラスト2  それから、昔の人はアワとか、ヒエとか、キビという穀物も食べたんだね。現代のきみたちはあまり食べたことがないだろうけど。キビというのは、桃太郎の話で、鬼退治のおともをするならキビ団子をあげよう、というところに出てくるね。

 そういうふうに、広く見れば日本人はいろんなものを主食として食べてきたし、今も食べているんだけど、やっぱりその中で特別に意味が大きいのは米なんだよ。日本人にとって米というのは、私たちはこれを食べている民族です、といってしまうぐらいの、主食の代表なんだ。だから、日本は主食として米を中心として食べている、とまとめていいんだね。
◆世界三大穀物は何だろう
 では、外国のことを考えてみよう。日本は米中心地帯なんだけど、そうじゃないところもあるんだから。
 そのひとつが、麦(むぎ)中心地帯だ。

 麦の栽培は今から一万二千年ぐらい前に、古代のメソポタミアではじまったとされているんだけど、それは世界中に広がっていったんだね。
海野さん 先生、メソポタミアってどこですか。
 海野さんの質問はとてもだいじなことだね。それがどこにあるのかわからないのに、ただ言葉だけを暗記したってしょうがないんだから、
山田くん メソポタミアって、ヘンな言葉。メソメソしているアンポンタンみたい。
 そういわないで、教えるから関心を持ってくれよ、山田くん。

 まずね、世界の四大文明のことを話そう。この地球上で、人類が最初に文明らしきものを持ったのは今から六千年ぐらい昔で、ほぼ同じころに世界の四つの地域でおこったんだよ。それが世界四大文明だ。

世界地図  人間はがあると住みやすくて、文明もおこりやすいんだ。だから四大文明は大きな川の近くに生まれた。そのひとつが、西アジアのチグリス川、ユーフラテス川という二つの川の近くに生まれたメソポタミア文明だ(地図A)。それから、今のエジプトのナイル川の近くに生まれたのがエジプト文明だ(地図B)。そして、今のインドとパキスタンのあたり、インダス川の近くに生まれたのがインダス文明(地図C)。もうひとつは今の中国の、黄河という川の近くに生まれた中国文明だ(地図D)。

 それで、その四つの文明の地では、いずれもが中心の食生活だったんだよ。小麦粉でパンを作って焼いたり、麦のおかゆを作って食べていたんだ。文明が生まれるには人々が集中して生活してなきゃいけないけど、麦の生産がそれを可能にしていたんだね。黄河文明というのは中国の文明で、中国では米を食べているんじゃないか、とみんなは思うかもしれないけど、そこも麦が中心の食生活だったんだ。もちろん、だんだん米も生産されるようになっていくんだけど、はじめは麦のほうが主食だったんだね。

 さて、それからのことだ。四大文明の時代よりあとになって、ギリシアやローマへと文明の中心が移っていくんだけど、そこでも麦が食生活の中心だった。そしてその伝統を受けて、ヨーロッパは麦中心地帯になっていくんだ。えーと、ここで麦といってるものの中には、小麦、大麦、ライ麦、えん麦(ばく)などの種類があるんだけど、そこまで細かく知っておく必要はないだろう。

 では次に、日本もその中に入るのだけど、米中心地帯のことをまとめておこう。

イラスト3  米はもともと、東南アジア(地図E)で最初に栽培されるようになったんだ。タイ、カンボジア、ミャンマーなんて国があるあたりだけれども、そのあたりは今も米の大産地なんだよ。

 そしてそういう米が、インドにも伝わって栽培して食べられるようになっていった。それから、中国の南部にも伝わって食べられるようになっていった。インドと中国南部は、もともとは麦中心地帯だったんだけど、米栽培がはじまって、麦と米の両方を食べる地帯になっていったんだ。

 ところで、世界の中に、麦でも米でもないものを主食として食べていた地帯があるのでそのことをまとめておこう。麦中心地帯、米中心地帯とならぶ第三の地帯だ。それは、北アメリカ大陸と南アメリカ大陸だよ。

 今現在は、北も南もアメリカ大陸では麦も栽培している。それどころか、北アメリカにあるアメリカ合衆国は、大豆や米だって大いに生産している大農業国だよ。

 でも、もともとあの両大陸では、中心となる食べ物が麦でも米でもなかったんだ。何をよく食べていたかというと、それはトウモロコシなんだよ。トウモロコシなんて、おやつのような食べ物だと日本人には思えるんだけどね。
山田くん アメリカではポップコーンが主食だったってことなの。
 山田くんがそう思うのも無理はないね。トウモロコシがごはんのかわりになるとは思いにくいものね。でも、それが主食だったんだ。焼いたり、ゆでたりして食べることがなかったとは言えないけど、最も普通の食べ方は、トウモロコシのツブツブの実を粉にして、水を加えてせんべいのようにのばして、両面を軽く焼いて食べるんだそうだよ。

 両アメリカ大陸の人は、そのようにトウモロコシを主食としていて、そのほかには、何種類かの豆類と、サツマイモやジャガイモで不足分をおぎなっていたんだよ。

 だから、世界三大穀物、という言い方をすると、と、と、トウモロコシがあげられるんだ。
 そして、日本はその中で米中心の食生活の国なんだね。
(二時間目 はじめの半分 終わり)
「学校よりおもしろい社会科」の先生
イラスト4 毎日あたりまえに食べているお米から、社会のことがつぎつぎわかってきたよね! きょう、ご飯を食べるときに、ぜひきょうの授業を思い出してみてね。

さて次回は、この二時間目のつづき。日本の主食は米ということがわかったけど、それってはじめからってわけじゃないんです。では、いつの時代からなんだろう? どうぞお楽しみに!
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