

|
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |


|
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |



豪華執筆陣のエンタメ最新作!


講談社の翻訳書 資料PDF公開!


新・幕末小説「交代寄合伊那衆異聞」シリーズ


人気沸騰!時代小説シリーズ「奥右筆秘帳」


児童書のセット製品(2012版)を一挙ご紹介!


シリーズ累計300万部突破!「あらしのよるに」シリーズ


壮大なスケールで描き出す、大傑作の異世界ファンタジー。


かつて子どもだったあなたと少年少女のための――


電子文庫パブリほかで購入できます!


小田実の全集、電子書籍版とオンデマンド版で創刊!

|
|
|
 |
さまざまの文学賞を受賞、常に時代の先頭を走る町田康がしばらくぶりの小説集『権現の踊り子』を発表した。表題作である第二十八回川端康成文学賞受賞作を含む同氏初の短篇集は、軽妙なタッチの『工夫の減さん』から、抱腹絶倒の時代小説『逆水戸』にいたるまで多彩でありながら、すべての作品は人間存在の不安とでもいうべきトーンに貫かれている。どのような動機に基づいてこれらの作品を書いたのか?各作品の主題は?本当にいいたかったことはなんなのか?腰痛がひどいと言っていたが治ったのか?町田氏に話を聞いた。(取材・文/江下村綱夫)
――で?どう?
「どうってなにが?」
――なにがってなにが?
「いや、どう?ってなにがどうなんだよ」
――なにがって新作出したんでしょ?
「まあね」
――『権現の踊り子』っつうんでしょ?
「まあね」
――じゃあそれに決まってんじゃん。どうなのよ、忌憚のないところ。
「っていうかさ、おまえ少し変だと思わない?」
――なにが変なんだよ。
「だってさあ、これインタビューなんだろ」
――そうだよ。
「普通、インタビューってさあ、そんないきなり、どう?とか言わねぇだろ。普通はさあ、作品の感想とかさあ、そういうとっからはいんねぇ?」
――ああそうなの?じゃあ、感想からはいるけど、『矢細くんのストーン』ってあるよねぇ?
「あるある」
――あのストーンっていうのは石っていう意味以外にラリるっつう意味にも取れると俺、思ったんだけど……。
「うんうん。そうかもしれん」
――あんたヤク中ですか?
「……。ヤク中じゃねぇよ。アル中でもねぇ。っていうか、いきなりヤク中はねぇだろうよ」
――じゃあなんつうのよ。普通は。あんたの好きな普通は。
「まあ、普通はあれだよね、ええっと、例えば、久しぶりの小説集ですがこの間、心境の変化などありました?あったとすればそれは作品にどのような影響を及ぼしましたか?とか聞くんじゃねぇの?」
――ああ、じゃあそれそれ。それ、どう?その変化変化、心境の変化。
「なんかすっげぇ答えんの虚しいなあ。まあ、ずっと同じペースで書いてるんだけどね、たまたま発表がそういうタイミングになっただけで、別に心境の変化とかはないよ」
――でも最初の『鶴の壺』が一九九七年の発表で最後の『逆水戸』が二〇〇二年の発表なんだけど、その間、マジなんにも心境の変化がねぇってことねぇんじゃねぇの。
「そらそういう意味ではあるよ。五年間、俺はなんの心境の変化もなく生きてんのかよ。それだったら馬鹿だよ。作風の変化もそらあるだろうよ。ただ、俺が言ってんのはおまえが言うような、この間次郎長にはいかなる精神転換の物語があったのだりましょうか。つうような物語、つまり分かりやすい物語はねぇよ、つってんだよ」
――つうことは分かりにくい物語はあったってことですか。
「まあ分かりにくい、とは形容されない、という前提で俺は物語つったんだけどね」
――でも結局、分かりにくいかもしれないけど、心境の変化と作品に関係はあるということだよねえ?
「まあね」
――そこを聞きたいね。
「やなインタビュアーだね。まあしょうがないから言うと、まあ、でもそこがもっとも描きたかったところではあるんだよね。つまり、それはどういうことかというと、いろんな角度からいうことができるんだけどある角度から言うと自他の関係ということとかね」
――自他ってなんだよ。
「自他ってのは自分と他人だよ。それがなんにも前提されないまま自分と他人、他人っていうのは世界ってことでもあるけど、その関係がぶっ壊れてる。例えばおまえさっき、自分の心境の変化と作品の変化の間に分かりやすい物語はねぇのかつったよな」
――つった。
「それがぶっ壊れだと俺は思うんだよ。つまり自分も作品も影響は世界にこれを受けてるんだよね。でも自分の心境が動くことによって作品や世界が動いてる、と思ってやがる。これは自分が死ぬと世界も滅びるつってんのと同じで妄想だよ。そしてこれは質問をする側においてぶっ壊れてるんではなく、答える側においてぶっ壊れてる」
――ってどういうことよ。
「つまり、いまそういうぶっ壊れ野郎があまりにも多くて、そこいらで牛丼食ったり評論したりしてて、それが世の中の普通になっちゃったから質問する側もそういう答えを最初から予測して質問しちゃうんだよな」
――なるほどね。
「でもそこで書くにあたって注意しないといけねぇことがひとつあるんだよ」
――なんだよ、それをいえよ。
「いえよってことはねぇだろうがよ。まあでも言うと、それはということはそういう奴でできてる世界そのものがぶっ壊れてるわけであって、じゃあそれに影響されてる俺もぶっ壊れてるわけであって、だからみんなぶっ壊れでチャラじゃん、と思わねぇことだね」
――なんで。
「教えてやろうか。教えてやるよ。おもしろくなくなるからだよ。俺もぶっ壊れてる、おまえもぶっ壊れてる、みんなぶっ壊れてるなんつってラリってると無感覚になるだろ?でもそんななにも感じない状態で描いてもおもしろくねぇんだよ。そこは正気に踏みとどまって、そいで書くのがおもしれぇところなんだよ。そこを踏みとどまってると脳に浮かぶ現実が1ミリずれる。それを紙に書くんだよ、字で」
――1ミリくらいたいしたことねぇんじゃねぇの。俺なんかこないだ歌舞伎町で学生に殴られて1メーターぶっ飛んだ。
「それがぶっ壊れなんだよ。てめぇを基点にしないと距離が測れねぇ。世界が1ミリずれたらたいへんだよ」
――どうなんだよ。頬骨が砕けるのか。
「だからそれがこの本に書いてあるつってんだろ」
――なるほどね。そういや、『ふくみ笑い』とかそんな感じだよな。『権現の踊り子』とかもそうだよね。でもさあ。
「なんだよ」
――そういうぶっ壊れの衝撃を脳で受けてそれで書いてるつーんでしょ。
「まあね」
――ってことは、あなたの脳はいま大丈夫なの?
「あ、俺の脳ですか。おほほほ。大丈夫よ、というと大丈夫じゃない感じに聞こえるし、そーとーやばいっつうと、やばいように聞こえるよね。でも疑問っていうか逆に俺の方から質問したいんだけどさあ、俺らなんでこんなタメ口なの?俺ら、つれ?ここ寒いし」
(二月二十二日/文京区音羽・講談社B2駐車場物陰にて)
|
|