作家の部屋


木葉井 悦子(作)

新装版 みずまき

講談社の創作絵本ベストセレクション
『新装版 みずまき』
■木葉井 悦子/作
■定価:1,890円(税込)
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「にわのみなさん、おきてください。あめだぞ、あめだぞ。」女の子がまく水を浴びて輝きはじめる庭の生きものたちが、ダイナミックなタッチ、鮮烈な色彩で描きだされます。生命力にあふれた力強い絵に誰もが思わず引きこまれてしまいそう……。
 初版当時から、書評、書店、読みきかせの現場でたいへん評価の高かった絵本です。





木葉井 悦子(きばい えつこ)
1937年、東京・小金井生まれ。武蔵野美術大学油絵科中退。個展を中心に作品を発表。
1970年より数回のアフリカ生活を経て、絵本を描きはじめる。主な絵本として『バオバブのこアビク』(福音館書店)『サバクでおちゃを』『一まいのえ』(フレーベル館)『やまのかぜ』『カボチャありがとう』(架空社)などがある。1995年逝去。





 うれしい、待望の復刊です。私たちは戦後絵本50年の歴史のなかで、すでに何人かの大切な作家を失っています。まちがいなくその一人が、木葉井悦子さんです。木葉井さんの新作を見ることができない。そのことに私は大きな落胆を覚えます。でも、『みずまき』を残してくれました。真夏のカンカン照りの庭。暑い暑い。あたりまえ。女の子が水をまき始めます。虫や動物はもちろんのこと、一木一草にいたるまで、みんな生き返ります。そのいのちの躍動が、土や大気も含んでまるごと、今、目の前にあります。すっきりします。気持ちが新たになります。慈雨、ということばがふとうかびました。潤う、ってこういうことなんだね。ああ、極楽、極楽。木葉井さん、私たちの心にいつも水まきしてくださって、ありがとう。





 ずっと木葉井さんの絵と絵本が好きで、いつか絵本をご一緒したいと思っていました。そんな時、「誰かコレ、やりたい人いないかな」と木葉井さんとおつきあいのあった別の部署の編集者から持ち込まれてきたのが『みずまき』のコンテ。「やるやるっ!」とすぐ手をあげて担当させていただくことになりました。そして「半分くらい出来たんだけど、見に来る?」と木葉井さんに言われ、ご自宅に伺ったとき。大きな絵が部屋中に並んでいて、もう、その時点で圧倒されました。「すごい……。」黒く光る牛の背中、生い茂る植物、さらにその影でなにか蠢いてる……。絵の中に吸い込まれるような、いやいや、自分の周りがその庭であるかのような、かな。とにかくなんだかクラクラした記憶があります。本ができたときは本当にうれしくて、「ぜひまた次の作品を……」などと、おずおず申し上げていたのですが……。
 木葉井さんが亡くなったのは、『みずまき』が刊行された翌年、私が切迫早産で入院中のことでした。周囲がそんな私の状況を察してくれたため、そのことを知らされたのは退院後、復帰してしばらくたった頃でした。「見守ってくれてると思って、元気だして」と言ってくれた方がいました。その年、無事に生まれた子はおかげさまで今年8歳になります。木葉井さん、この復刊も見守っていてくださるでしょうか。新装版の奥付(発行日)は6月29日、木葉井さんのご命日です。(N)