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Vol,4 コンフェデ杯 明るい未来の予感 (27 Jun, 2003)

※写真は「FBN Photo」でも公開中(高解像度画像+他の写真も見られます)
フルヴィエール大聖堂から見たリヨンの街並み
フルヴィエール大聖堂から見たリヨンの街並み

コンフェデレーションカップ取材とバカンスのため、フランスのリヨンにいます。毎日暑い日が続いていますが、日本より湿度が少ないためか33‐35度という気温の割には快適です。ちょっと散歩するだけで汗をかくほどですが、日本の夏のような地獄ではありません。古代ローマの植民地だった古い歴史を誇る町ですから、散歩するだけで楽しく、何より屋外のカフェで飲むビール、あるいはペリエ(=炭酸強めのミネラルウオーター)は格別です。“サッカーの楽しさは、いろんな町に行けること”、“飲み物とタバコは空気&気候とのブレンドでうまさが決まる”という持論が間違っていないことを再認識しました。

フルヴィエール大聖堂の夜景
フルヴィエール大聖堂の夜景

さて、日本代表はグループリーグで敗れてしまいました。残念なことですが、僕は“日本の実力はこんなものであり、次につながる敗退だった”と思っています。

日本の多くのマスコミは試合の勝敗に一喜一憂し、「勝てば官軍」的な報道をしますが、それは大間違いです。なぜなら、今の日本がすべきことは2004年のアジアカップ、05年のワールドカップ予選に向けて、サッカーの質を高めることだからです。

では、質の高いサッカーとは何か? 簡単にいえば、人間の思考能力、運動能力を限界まで駆使してボールをコントロールするサッカーです。言い方をかえれば、奇跡や偶然よりも、人間の能力を信じることが基本です。現在のレアル・マドリードのように、すばやいパスワークでボールをまわすスタイルは、ひとつの典型例と言っても良いでしょう。

多くの専門家が難しい戦術のことを口にしますが、その前に基本的なことを書きましょう。
1=どんなに足が速い人間よりも、ボールは速く空間を移動する可能性がある。――ドリブルよりもパスのほうが速くボールは移動する。
2=相手も同じ人数ゆえ、フェイントなどで相手を1人抜けば、1人分数的有利になる。――ドリブルとパスのバランスで最適な方法を模索するのがベスト。
3=守備を重視すれば失点は防げるかもしれないが、得点のチャンスは減る。逆もしかり。
4=自分たちでボールをキープしている限り失点はない。それも、相手陣内に近ければ近いほど良し ゆえに、リスクを冒すのは相手陣内のほうが安全。そういう意味では、コロンビア戦の日本の失点は最悪の例です。
5=クリアあるいは精度の低いパス、クロスは相手にパスをするようなもの。

以上を前提に、日本の3戦を振り返ってみると――。

高原は幾度も決定機を迎えながらゴールならず
高原は幾度も決定期を迎えながらゴールならず
対ニュージーランド戦 3対0と圧勝しましたが、ボールの動きは遅く、単調でした。「ジーコ・サッカーは個性重視」といわれていますが、中村、中田英寿、高原、大久保の4人で攻めて、残りの7人で守るスタイルでした。ポジションチェンジをするのは、FWと中村と中田だけ。2列目からの飛び出しなど、相手を惑わせるプレーが少なすぎます。まるで70年代のサッカーです。

対フランス戦 相手のボールしが速いためか、日本もそれに合わせて健闘しました。不思議なことですが、日本は弱い相手には苦戦する反面、強い相手には善戦します。ただ、役割分担サッカーという点ではニュージーランド戦と同じでした。高原と大久保がスペースに走ってパスを受けた後、再びパスを“落とす”などバリエーションがない点が致命的な気がしました。本来であれば、三都主(さんとす)と山田のサイドバックが攻撃参加してフォローすべきですが、MFたちが彼らを生かす動きをしません。これでは、攻撃的な選手をサイドに置いた意味がありません。稲本の反則でPKになったのは、ホームタウンデシジョンですが、そんなことは文句を言っても意味がないです。フランス以外は7ヵ国とも“アウェイ”なのですから。そういう意味では、今大会で“アウェイ”を強調しまくった専門家はアホだと思います。
3戦全てに先発出場した大久保
3戦全てに先発出場した大久保
対コロンビア戦 それまでの2戦に比べるとボールがスムーズかつ多彩に動いた試合でした。特に失点後の攻撃は素晴らしかったです。三都主は相手をフェイントで抜き、山田はスピードのあるクロスをあげるなど、やっと「4‐4‐2ブラジル風」のサッカーができたという感じでした。“最初から、そのサッカーをやっていれば……”という思いも残りましたが、“すべきこと”が見えた点で本当に意味のある敗戦でした。

では、3戦を通して個々の選手レベルで考えてみましょう。


中村=パスセンスとプレースキックの能力が高いのは言うまでもありませんが、切り返しなど個人技を駆使するあまり、ボールの動きが遅くなり、単調になりがちでした。サイドバックからすると攻撃参加のタイミングを読みにくいプレーばかりでした。
小笠原=プレーにムラがありますが、山田の攻撃参加に合わせてパスを出すなど、“周りを生かそうとする”点では中村以上でした。
中田浩二=彼が入ると、ボールの動きがスムーズになる点が印象的でした。途中交代のフランス戦ですら“さすが”と思ったほどで、コロンビア戦では攻守のバランス感覚を駆使して、三都主の攻撃能力を活かしていました。
稲本=コンディション不良だったかもしれませんが、中田英寿と中村に遠慮してか、攻撃参加が皆無。ワールドカップで見せたような攻撃参加をしない(システム上できない?)状況はすなわち攻撃面での戦力ダウンを意味します。稲本の能力よりも、中村と中田のセンスを活かすという判断だったのでしょうか? で、攻撃は単調になっても良いということでしょうか? もったいないです。
中田英寿=スペースへ走りこむセンスとスタミナはチーム随一。一方、パスは精度は高いものの単調。もっとも彼はもともとそういうタイプであり、キラーパスなどと騒いだ輩にサッカーを見る目がないだけです。
宮本&坪井=安定していましたが、攻撃面で物足りません。ジーコは彼らの守備能力だけに期待しているのかもしれませんが、チーム全体の攻撃が単調になったのは彼らも要因です。今、秋田と森岡の出番がありませんでしたが、例えば秋田はヘディングが強いため、セットプレー時あるいはいちかばちかの攻撃面で威力を発揮する。コロンビア戦の後半にFWとして入れる策もあったのではないか?
三都主&山田=持ち味を発揮できないことが多かったですが、彼らだけの責任ではありません。
大久保&高原=ポストプレーなどもすべき。動きが単調すぎる。これまた、彼らだけの責任ではありませんが……。

以上、批判めいた部分もありますが、それぞれの選手に個性があり、絶対的な評価はできないということを言いたかっただけです。また、本当に良いチームを作りたいなら、喧嘩してでも自分を主張しあってほしいと思いました。

ジーコとエドゥー
コロンビア戦後、うなだれるジーコ(監督)とエドゥー(テクニカルアドバイザー)兄弟(右端二人)

ちなみに僕は、今の中村はいまいちだったと思っています。あれだけタマ離れが悪いと……イタリアでの評価はあがらないと思います。素早いパスワークもできる選手ゆえ、残念です。



P.S. コロンビア戦の後、思ったのですが、なぜ日本チームは、“ありがとうサンテティエンヌ”という垂れ幕くらい用意して、ピッチをらなかったのでしょうか。まったく関係のない国“日本”を応援してくれたファンもいるし、大会運営のために働いたボランティアもいます。そもそも、サッカーはファンあってのもの。日本サッカー協会のお偉いさんには是非、ご一考願いたいです。

(2003年6月24日 木次)
文=木次成夫
1964年、長野県南佐久郡北相木村生まれ。千葉市在住。上智大学外国語学部イスパニア語学科卒業後、講談社に入社。社員編集を8年間した後、フリーに。スペインとオランダのサッカーが好き。サッカー取材などで40ヵ国以上訪れた旅行好き。集英社発行の『スポルティーバ』でスペイン情報コラム連載中。
写真=山田一仁
1957年、岐阜生まれ。千葉大学画像工学科卒業。文藝春秋写真部8年間勤務を経て、91年よりロンドンを拠点に活躍。日本人フリーカメラマンで唯一プレミアリーグ取材許可証を持つ。

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