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Vol,6 女子W杯プレーオフ第1回戦 (11 Jul, 2003)
2003年7月5日土曜日。場所はメキシコシティ、アステカスタジアム。あのマラドーナが'86年にワールドカップを手にしたスタジアムで、8万5000人の大観衆が見守る中、その試合は行われた。対戦カードはメキシコ女子代表対日本女子代表。9月からアメリカで行われる第4回女子ワールドカップへの、最後の出場権をかけたプレーオフ第1回戦である。 アステカスタジアムは約10万人収容のサッカー専用スタジアムだ。女子サッカーになんてそんなにお客さんは来ないだろう。これでは、たとえ観客が1万人入ったとしても、ガラガラに見えるだろうなと思っていた。しかし試合前日、レフォルマ紙(メキシコシティの代表的な新聞)のサッカー担当記者、エルナンデス・ロメロ氏にこのことを聞くと意外な答えが返ってきた。 「たぶん、半分くらいは入ると思うよ」 「半分」といったって10万人の半分だから5万人。……5万人!? いくら無料開放するとはいっても、日本であれば考えられない数字だ。それでは、メキシコでは女子サッカーが人気なのかというとそういうわけでもない。メキシコには女子の国内リーグはなく、アメリカのプロチームや大学でやっている選手を除けば、何かの大会があるたびに集まって、本格的にサッカーをやるのはそのときだけという状態らしい。まだまだ女性の社会進出が妨げられているメキシコ社会の現状がここにも表れているという。それでも、女子とはいえメキシコサッカーの聖地とも呼ぶべきアステカスタジアムで代表の試合があるのだから、みんな応援するだろう、というのがロメロ氏の答えだった。 ![]() 試合当日の現地新聞。レコルド紙(左)はお寿司を食べている(つもりの)写真、レフォルマ紙はご飯を食べている写真がトップに来ている。ちなみに写っているのは実際の選手たち。 この試合は新聞、テレビなどでも積極的に取り上げられた。アステカスタジアムで行われた日本代表の前日練習には、地元のほとんどの新聞社とテレビ局が駆けつけていたし(もっとも練習は急遽非公開、コメントも一切なしになった)、試合当日のレフォルマ紙のスポーツ面トップもスポーツ新聞レコルド紙の1面も女子サッカーが飾った。このことも多くの観客が予想された理由だろう。 試合当日、2時間前にはすでにたくさんの人が列をつくって並んでいた。スタジアム前の広場にはたくさんの露店が並び、国旗や帽子、ユニフォームなどの応援グッズや、メキシコ国内リーグ各チームのグッズ、それにタコスやジュースなどが売られていた。観客の数はというと試合開始時には2階席はほぼ空席で、全体の2〜3割ほどが埋まったかなという程度。半分も入らないじゃないか、と思っていたら、試合が進むにつれどんどん増えていき、ハーフタイムを迎えるころには2階席もほぼいっぱい。気がつけば半分どころか8万人を超える大観衆になっていた。メキシコ、恐るべし。 ![]() 国家斉唱時の日本代表。この時点ではまだ2階席はガラガラだった。 さて試合のほうはというと、序盤は日本のペース。前線の大谷未央(田崎ペルーレFC)、2列目の澤穂希(アトランタ・ビート)、小林弥生(日テレ・ベレーザ)を中心に相手ゴールに迫るが得点にはいたらない。20分を過ぎたころからは一転メキシコのペース。イリス・モラと澤のアトランタでの同僚、マリベル・ドミンゲスの2トップに中盤やサイドバックが絡んでチャンスをつくり出す。日本も反撃を試みるが、1トップの大谷へのロングボールは180cmのモニカ・ゴンサレスと172cmのルビ・マルレネ・サンドバルの長身センターバックコンビにはねかえされ、キープすることもままならない。結局、前半はメキシコペースのまま0‐0で終了した。 後半が始まると再び日本が攻勢に出る。そして51分、相手ゴールキックのこぼれ球を拾った左サイドの山本絵美(田崎ペルーレFC)がロングシュート。これは横っ飛びしたGKパメラ・タホナルの手をかすめてクロスバーに当たったが、跳ね返ってきたボールはゴール正面に詰めていた小林のもとへ。ワンバウンドで頭上を越えそうなボールに対し、めいっぱい体を伸ばしてジャンピングヘッド。タホナルが体勢を立て直すより先にボールは無人のゴールへ吸い込まれ、ついに日本が先制点を奪った。 ![]() 後半にむけてピッチに戻ってきた選手たち。2階席までお客さんがいっぱいになっている。 その後も日本はチャンスをつくるが、60分に一瞬の隙をつかれてしまう。メキシコの右からのスローイン。ボールを受けようとしたイリス・モラがうまく体を入れ替えて、背負っていたDFをかわすとそのままミドルシュート。GK山郷のぞみ(さいたまレイナスFC)が、頭上を襲うボールに必死に手を伸ばしたが届かず、そのままゴールイン。1‐1の同点となってしまう。 勢いづいたメキシコは個人技を生かして攻め込むが、日本もキャプテンの大部由美(YKKフラッパーズ)を中心に必死のディフェンスを見せる。74分、日本はスローインから右サイドを突破し、ニアサイドの澤へセンタリング。これは相手DFが何とか先に触ったが、この力ないクリアボールをゴールほぼ正面、ペナルティエリア付近で待っていた宮本ともみ(伊賀FCくノ一)が豪快に蹴りこみ、日本がリードを奪う。 しかし直後の76分、メキシコの右コーナーキックに飛び出したGK山郷と味方DFが交錯。誰も触ることなくゴール前に落ちてきたボールをマルレネ・サンドバルが落ち着いてヘディングし、メキシコが再び追いついた。 ![]() 試合終了後ロッカールームに引き揚げる澤、酒井與恵(日テレ・ベレーザ)、川上直子(田崎ペルーレFC)の3選手。得点シーンのリプレーが映し出されていた電光掲示板を見上げている。 日本がリードしてはメキシコが追いつく展開に観客席もヒートアップ。メキシコのパスがつながるたびに「Ole!! Ole!!」の大合唱。日本がボールを持てば大ブーイング。サポーターの大声援にのせられて、メキシコが何度かチャンスを作ったが、結局試合は2‐2のまま終了。日本としてはアウェーで引き分けだから「ベストではないが満足できる結果」(上田監督)といったところだろう。 メキシコ代表という相手だけでなく、8万5000人の大観衆、2000mを超える標高、14時間の時差とも戦った日本代表。今度はホームで持てる力をすべて出し切ってくれるはずだ。 運命のVol,2戦は7月12日午後3時、日本サッカーの聖地、国立競技場でキックオフだ。 (2003年7月9日 岡本)
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