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Vol,5 ライバル韓国五輪世代の素顔 (5 Aug, 2003)

「ビデオで見た日本のほうが強かったみたい」
 7月23日に東京で行われた日韓五輪代表親善。記者たちでごったかえすミックスゾーンでそう語ったのは、先制ゴールを決めた崔兌旭(チェ・テウク)だった。
「実は今の試合に先立って、日本五輪代表の過去の試合はほとんど目を通していたんですよ。5月のミャンマー戦やニュージーランド戦はもちろん、4月に行われたコスタリカ戦のビデオも見た。ビデオの中の日本は、個人技があり、スピードもあり、組織力もあって、とても強いと感じました。でも、今日の日本は調子が悪かったみたいですね」
 敬虔なクリスチャンである崔兌旭は、礼儀正しく謙虚な性格の持ち主である。高校時代からの親友で、日本では攻撃的な性格とビッグマウスで知られる李天秀(イ・チョンス)とは正反対。00年6月にふたりを取材したときも、「お前は優しすぎるんだよ。もっと我を出さないとプロでは生き残れないぞ」という李天秀の説教に、ただニコニコと笑顔を浮かべるほど人がいい。
 その崔兌旭が冒頭のような発言を口にしたのはちょっぴり意外な気もしたが、ただの強がりだと聞き流すことはできないような気がする。というのも、シュート数は日本5、韓国12。CK数は日本0、韓国4。ファウル数の目安となるFK数も日本19、韓国25。ボール支配率では50.2%対49.8%と日本が僅かに上ったが、それも最終ラインでのパスしが多かったためという見方もできる。見た目でも公式記録上でも、韓国優勢は明らかだった。

 それだけに多くの韓国五輪代表選手たちが「勝てる試合だけに引き分けてしまったことが惜しい」と語っていたのだが、そこに対抗心剥き出しの対日感情は微塵もなかったことが印象的だった。
 もちろん“日本に負けてはならない”という韓国サッカー界の伝統の魂こそ受け継ぐものの、そこには遺恨や因縁といったネガティブな要素はない。むしろ「日本に学ぶ点は多い」と、自国と日本との関係を相対化できる目を持っている。語ったのは、テンポのいいダイレクトプレーで存在感を放った金斗R(キム・ドゥヒョン)だ。
「日本は、韓国にはない中盤の構成力があった。攻守のバランスを保つのもうまい。僕たちもああいったうまさを身につけると、サイド攻撃がもっと生きてくると思いましたよ。個人的には松井(大輔)が印象に残りましたね。非常にテクニックがある選手だと思う」
 ちなみに試合後、金斗Rを含めた数人の韓国五輪代表の面々たちと食事の席を一緒にする機会に恵まれたのだが、皆、日本の文化や流行に興味津々で、「秋葉原はいつから電気街と呼ばれるようになったのか」「どうしてBoAは韓国人なのにBoAなのか」など、思わず『トリビアの泉』に聞きたくなるような質問攻めにも遇ってしまった。
 気がつけば、午前3時過ぎ。若いだけに好奇心旺盛で体力満点。激しい試合を戦い終えたあとだというのに、ほとんどがプロで本国では“史上最強の五輪代表”と称される彼らは、まったく疲れることをしらない。

 それだけに、9月17日にソウルで行われるリターンマッチでも韓国五輪代表は手ごわそうだが、ヤング・ジャパンも黙ってはいないはず。8月のエジプト遠征を経て一段とたくましくなった姿を、披露してくれることだろう。
「前対戦した韓国のほうが強かったですよ」
 そんな発言を、今度は日本サイドから聞きたいものである。そして、試合後は韓国の文化と流行を楽しんでもらいたいものだ。
 その際には、本誌春号の『ディープ・ソウルナビ』を忘れずに。手前味噌になるが、ハングル対応グルメカード付きなのでそんじょそこらのガイドブックよりも大いに役立つこと、間違いなしだ。

(2003年8月3日 慎)
文=慎 武宏(シン・ムグァン)
1971年4月16日東京生まれの在日コリアン3世。東京朝鮮中高級学校、和光大学卒業後の94年4月よりスポーツライターとして活動を開始。各種サッカー専門誌や総合スポー ツ誌で主に韓国サッカーに関する記事を取材寄稿中。著書に『WITH KOREA ! W杯成功への 道』(廣済堂出版)、共著に『LIBERO ホン・ミョンボ自伝』(集英社)があり、昨年上梓し た『ヒディンク・コリアの真実』(TBSブリタニカ)は、02年ミズノスポーツライター賞最優秀賞 を受賞。

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