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Vol,14 藤田俊哉 取材記 (16 Dec, 2003)

 前、レッジョカラブリアに行ったことを書いてから、1ヵ月以上がたってしまいました。改めて、月日の流れるのは早いものだと感じます。

藤田俊哉
笑顔でインタビューに応じる藤田俊哉選手

 フットボール・ニッポン(以下FBN)冬号(03年12月20日発売)の取材を兼ねて、11月22日から2泊4日で藤田俊哉選手に会いに行ってきました。ご覧の写真は、その時のインタビューカットです。「高校サッカーの名門校」という特集と「日本vs.カメルーン戦」レポートのために話を聞いたのですが、写真を見るとかなり機嫌が良かったようです。是非、ご覧ください。
 ちなみにカメルーン戦のスタメンで、冬の高校選手権で優勝経験のある選手は藤田選手(清水商業)だけでした。そして、11人のうち4人(高原、藤田、小野、山田)が静岡県の高校出身でした。
 FBNの「名門高校」企画は、こんなふうに、いろいろ調べてみました。スペースの関係で記事にはできなかったのですが、藤田選手は「小学校から中学校、高校、大学までずっと三浦文丈さん(FC東京)が先輩だった」そうです。

 ところで藤田選手は東アジア選手権の対韓国戦に出場しました。3泊5日のハードスケジュールにもかかわらず、好プレーを見せたのですから驚きです。本人に、そんなのは当たり前と言われてしまうかもしれませんが……。藤田選手のスケジュールは以下のとおりです。

12月6日(土)ユトレヒトの試合に出場
12月7日(日)午後8時過ぎにアムステルダム発(日本へは約11時間かかります)
12月8日(月)午後3時過ぎに成田空港着。その後、チームに合流
12月9日(火)練習
12月10日(水)試合
12月11日(木)成田発でアムステルダムに戻る

 実は、藤田選手がアムステルダムから成田に向かう際、僕も同じ飛行機に乗っていました。藤田選手はビジネスクラス、僕はエコノミークラスという点で差はありましたが、僕は非常に疲れが残りました。まあ、僕はFBNの事情もあり、成田発1泊3日で欧州に行ったことも、疲労の理由かもしれません。
 成田空港で「飛行機の中では寝たほうがいいんだろうか」と問いかけると、藤田選手は「よくわかんないけど、眠くなったら寝るようにしている」。普段どおりの自然体、いかにも“らしい”答えだったのですが、疲労がプレーに出ないといいなあ……と心配な面もありました。
 というのは、個人差があるでしょうが、日本から欧州に行くよりも、欧州から日本に戻るほうが時差に慣れるのに時間がかかるし、疲れるからです。以前、川口能活選手も同じことを言っていました。
 10日の試合当日、元気にプレーをする藤田選手を見て、トップクラスのスポーツ選手の凄さを実感しました。

藤田俊哉
インタビューはオランダ・ユトレヒトで行われた。藤田選手は、2004年1月1日より古巣・磐田に復帰する

ところで、藤田選手の04年1月からのジュビロ磐田復帰が決まったようです。Jリーグで2位に終わったからでしょうか?  ひとりの藤田ファン、ジュビロ磐田ファン、そしてひとりの日本人として怒りでいっぱいです。
 確かに藤田選手のユトレヒト移籍は、ユトレヒトが一切の金銭を払わないという異例のものでした。ジュビロ側からすれば、帰国させる時期はチーム側に権限があるということでしょう。
 でも、Jリーグのセカンドシリーズで2位に終わったとはいえ、ジュビロは底力を見せたではないですか? 90年代中盤以降、サッカーの質ではジュビロがダントツだということは、ファンなら誰でもわかっていることだと思います。
 藤田選手は、中山選手ら同様、長い間かけてジュビロ・サッカーを作りあげてきた立て役者です。引退後はチームに残ってほしい幹部候補生だと思うのですが、違うのですか?
 なぜ希望をかなえてあげられないのでしょうか? 一般企業の社員留学と同じように考えられないのでしょうか? 家族からすれば、やっと慣れてきたのに……という段階でしょう。もし、藤田選手が1シーズン、オランダで過ごせれば、家族も外国生活のノウハウを後輩に伝えることができたでしょう。現在、欧州でプレーする選手の中で、既婚者として移籍したのは藤田選手と戸田(和幸)選手だけです。さらに30歳すぎの初移籍は藤田選手が初めてです。そういう意味でも貴重です。さらに、藤田選手はチームにフィットしていました。贔屓目かもしれませんが、藤田選手が頑張った結果、ユトレヒトがジュビロに「今後もどんどん選手を派遣してほしい」という関係ができれば最高なのに、と思うほどでした。オランダサッカーは、パスをつないでキープ率を高くすることを重視する点で、ジュビロと似ています。だからこそ、藤田選手はフィットすると確信していましたし、今後につなげてほしいと思ったのです。

 今季は、ジェフの中西選手、アントラーズの秋田選手など長年チームに貢献してきた選手の解雇がありました。サッカークラブゆえ利益をあげることが最優先事項ということはわかりますが、短期的な収支決算ばかり気にして、長期的な観点が欠けていると思います。まるで、リストラを進める一般企業のようです。
 人は、なぜサッカー(様々なスポーツを含めて)を観るのでしょうか? スポーツそのものとしての魅力だけでなく、一般社会ではありえない“夢”を実体験できるからではないでしょうか? 小さいチーム(例えるなら零細企業)が、ビッグクラブ(大企業)に勝つとか、経済的に貧しい国が大国に勝つとか……。一瞬のことであっても、スポーツの世界だけのことであるとはわかっても、多くの人の“元気の素”になるからこそ、高い金を払ってでも観戦に行くのではないでしょうか? あるいは、下手ながらも子供の頃からサッカーが好きでたまらない人間が、自分にできなかったことを選手に託すからではないでしょうか?
 もし、チーム側がファンのことを考えてくれるなら、藤田選手の希望をかなえてほしかったです。一般人並みのカラダ、年齢、取材陣にしっかりと応える姿勢など、様々な面で選手の見本です。そんな選手が、リスクをかけてオランダに行き、プレーした時点で、多くのJリーガーに夢を与えたはずです。さらに20代前半が中心になった日本代表に復帰して、チームに貢献した時点で、ベテランといわれる選手も「頑張ろう」と思ったでしょう。
 本人には申し訳ない言い方かもしれませんが、小さく、スピードもたいしてなく、30歳をこしているからこそ、彼が実践したことに僕は感動しました。そして、ずっと見ていきたいと思いました。


PS 藤田選手と、ジュビロ復帰が決まる前に将来のことを話したことがあります。僕は、「J2からJ1にあがるチームで、藤田君ほど貴重な選手は稀だと思う。若手を引っ張る意味でも、絶対にオファーは来る」と思い込みで言いました。すると、藤田選手は「そういうチームがあったら、是非、行きたい」といいました。  新潟の皆さん、今が狙い目です。


PS2 2泊4日、あるいは1泊3日で欧州に行こうなどと考える人は、あまりいないでしょうが、よもや考えている人がいたら……と思い、経験者としてのアドバイスを書きます。

 まず、日本発ヨーロッパのディスカウントチケットは、最低で3−4泊するスケジュールでなければ発券できません。つまり、1−2泊では普通運賃(50万円以上)になってしまいます。では、僕らフリーの取材者はどうしているかというと、日本発ヨーロッパ往復チケットと、ヨーロッパ発日本往復チケットをそれぞれ1枚ずつ買うのです。
 たとえば、
・チケット1=(日本で購入)日本発 12月20日、ヨーロッパ発1月4日
・チケット2=(ヨーロッパで購入)ヨーロッパ発12月21日、日本発1月3日

 こうすると、日本発ヨーロッパ1泊3日の旅が2できるわけです。

 もっともディスカウントチケットは最低宿泊数と同時に最高宿泊数の制限があります。ディスカウントチケットもいろいろな種類があり、ルールも違いますが、1ヵ月先に、もう一ヨーロッパに行くのもいいかも……なんて人には役立つ買い方です。また、上記のような買い方をして、結果的に往復一分は捨てることになったとしても、普通料金のチケットを買うよりは格安です。

(2003年12月14日 木次)
文=木次成夫
1964年、長野県南佐久郡北相木村生まれ。千葉市在住。上智大学外国語学部イスパニア語学科卒業後、講談社に入社。社員編集を8年間した後、フリーに。スペインとオランダのサッカーが好き。サッカー取材などで40ヵ国以上訪れた旅行好き。集英社発行の『スポルティーバ』でスペイン情報コラム連載中。
写真=岸本勉

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