
準々決勝のサンフレッチェ広島ユースVS.東京ヴェルディユース戦。埼玉スタジアムVol,2で行われた
10月9日にいよいよ準決勝を控えた高円宮杯全日本ユース選手権。昨年準決勝で敗れた悔しさを胸に雪辱をはかる広島ユースの前に立ちはだかる敵は、自分たち自身でも、試合相手でもなく、もうひとつあった。
鬼寮長と選手から恐れられる広島ユースの稲田稔氏は、試合に勝った話のときよりも、嬉しそうな顔をして見せた。
「人間、好きなモノのためなら、頑張れるんです」
Jリーグ下部組織で唯一全寮制という手法をとっている広島ユース。高校の三年間という人間形成にとって大事な時期を預かるのだからと、口うるさいくらい厳しくしている。(「寮長、最近丸くなったんですよ。やっと最近の高校生がわかってきたちゃうんかな」M選手談)
広島ユースでは、定期テストで欠点(=赤点)を取ると練習にも参加させてもらえない。そうなればもちろん試合には出られない。想像してもらいたい。みんなが、練習に行く中静まり返った寮でひとり寂しく勉強しなければならない光景を。
昨年、準々決勝でひとつの目標であった高校の雄・国見を倒し、優勝確実といわれながら、準決勝で小林祐三(現柏)、横山拓也(現浦和)、松下幸平(現磐田)らのいる静岡学園に0−1で敗れた。森山監督は、敗因のひとつに、定期テストと日程が重なったことをあげた。選手たちのその悔しそうな表情は今でも鮮明に覚えている。(弊誌2003年冬号112ページ参照)
その静学戦の失点の要因となったのが、某選手。試合後、森山監督は「あいつはときどき気の抜けたプレーをする。そういうところは普段の生活にも出ている」と話した。実はその選手は昨年、赤点の数がユース史上最多という不名誉記録を樹立してしまったのだ。
だが、その彼が今年は欠点が一個もないそうだ。冒頭の寮長の言葉につながる。
「赤点が4つも5つもあったようなモンが、今年はひとつもないんですから」
本人はその分サッカーの調子が悪いと苦笑い。とはいうものの、春には二種登録でトップの試合へ出場を果たした。来春にはトップ昇格が決定的だという。見ている側からすると、昨年と比べると自信に満ち溢れているようにみえる。
プレースタイルは、監督のゴリさん(選手たちはみんなこう呼ぶ。疑問に思い尋ねたところ、「わからん、それが普通」とのこと)こと森山監督の現役時代に似ている。鈍臭く、泥臭く。スピードもテクニックもない。同じ不器用仲間(?)の僕としては気にならないはずがない。
7日からはいよいよ中間テストだという。昨年同様準決勝の前である。今年こそテストにも対戦相手にも自分にも負けず、昨年の悔しさを晴らしてほしい。
(2004年10月7日)