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Vol,52 大久保の「マジョルカデビュー」(11 Jan, 2005)

大久保の活躍を大きく報道する新聞。右の二紙はマジョルカの地元紙。左端は全国紙の地方版
▲大久保の活躍を大きく報道する新聞。右の二紙はマジョルカの地元紙。左端は全国紙の地方版
 1月9日、大久保嘉人がスペインリーグリーグVol,18節、マジョルカ対デポルティーボ・ラコルーニャ戦で1得点1アシストという見事なデビューを飾りました。試合開始当初は、味方からパスが来ず「いつものことながら、新参者は辛いなあ」と思っていたのですが、時間を経るごとにパスが集まりました。徐々にチームメイトが大久保の実力を認めたということでしょう。今まで何人もの選手の「欧州デビュー」戦を見てきましたが、最初のうちはパスをもらえなないものです。ペルージャ時代、ユベントス戦で2ゴールという鮮烈なデビューを果たした中田英寿にしても、試合を通して見れば孤立気味でした。ですから、大久保のプレーには感動しました。

 では、なぜ大久保が活躍できたのか……。いろいろ考えてみました。
1=まず、相手のデポルティーボ・ラコルーニャ(以下、デポル)
 昨年、チャンピオンズリーグ・ベスト4の強豪ながらも、ここ数年、主力の高齢化が問題になっており、今季はさすがに限界に達したようで、マジョルカ戦時点で12位と低迷していました。日本では「デポル=攻撃的サッカー」といわれていますが、相手の攻撃を高い位置でパスカットして、速やかにゴールを狙うスタイルです。いわば「リアクション」のサッカーですから、相手に引かれると困ってしまわけです。実際、この試合、マジョルカの守備陣が速やかにラインを下げたため、デポルは良い攻撃の形が作れずに苦しみました。
 僕は試合前、適度に強い相手のほうがマジョルカの得点チャンスがあると思ってました。なぜなら、「最悪引き分け狙いではなく、勝ちに来る」相手のほうが、守備陣にスキがでやすいからです。

2=なぜ、大久保にパスが集まりだしたか。例えば西澤明訓がプレーしたエスパニョールはエースのタムードはじめ「生え抜き」の選手が多く、西澤の移籍時点で「チームの形」がありました。ところが、マジョルカは毎年選手の入れ替えが多いチームで、今季は長年君臨したエトオ(カメルーン代表)がバルセロナに移籍してしまいました。多くの選手が「外様」です。どちらかがチームに入りやすいか……後者のほうだとは思いませんか?
 また、大久保が着実に自分の持ち味を出せたことも幸いでした。

 得点にはなりませんでしたが、ボールをおいかけてGKと交錯する直前にシュートを打ったシーンがありました。大久保はこのプレーで「スピードがある」ということを証明しました。ちなみに、このプレーでスタンドが大きく沸きました。

 アシストのプレーは、右のカンパーノがボールキープしまくりで、ワンパターンのクロスしかあげてなかったので、タイミングを見計らった大久保の精度の高いクロスは「意外性」があったと思います。このプレーで大久保は「プレーの精度」を証明しました。

 得点した後、ボールキープからタイミングを見計らってスルーパスを出したシーンがありました。このシーンはアシストと得点シーンとともに現地スペインのスポーツニュースで放映されたのですが、「パスセンス」も証明したわけです。

 また、相手と対峙した際、積極的に抜きにかかるプレーを何度もやっていました。失敗することも多かったですが、スペイン人はこういうプレーが好きです。例えばレアル・マドリードのフィーゴが大人気なのは、常に「勝負」するからです。

 というわけで、大久保は様々な持ち味を初戦で披露できたわけです。僕は何より、上記したスルーパスに感動しました。味方が絶妙のタイミングでスペースに走っていましたから。
 結果的に試合に勝つことはできませんでしたが、デポル相手に引き分けは上々です。試合後、スタジアムでは多くの子供(もちろんスペン人)が「ヨシト オオクーボ」と叫んでいました。

 ところで、日本代表では得点できずに苦しんでいた大久保が、なぜスペインでは活躍できたのでしょうか。それはプレースタイルも関係していると思います。
 まず、大久保は中央からサイドに流れることが多いですが、それよりは中央で相手DFの裏を狙うか、サイドに出てから中に切れ込むことで持ち味を発揮するタイプです。そういう意味で、サイドアタッカーを配置して、サイド重視のスペインは合うわけです。
 前線あるいは守備陣の間にスペースがあってこそ持ち味を発揮するタイプでもあります。つまり、ガチガチのマンツーマンではなくゾーンで守ってくるスペインは、大久保向きです。もちろん、大久保を意識してプレーしてくれるチームメイトがいることが前提ですが。

今後の課題=ハンブルガーSVで高原直泰のチームメイトだったアルゼンチン人ストライカー、ロメオが加入しました。同じアルゼンチン人のクーペル監督の「お気に入り」のようです。果たして、どんなメンバー構成にするのでしょうか。ロメオのワントップにしてルイス・ガルシアを補欠にするか、ロメオとルイス・ガルシアの2トップにして、大久保を右サイドアタッカーに配置するか。

(2005年1月11日記)
文=木次成夫

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