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Vol,62 7月24日は"名古屋では"藤田俊哉の日でした(28 Ju, 2005)

 7月24日、名古屋対磐田で藤田俊哉のプレーに酔いました。名古屋は90年代中盤の全盛期に比べると、サッカーの完成度が低い上に、際立った選手もいません。この試合、贔屓目ではなく、藤田が"攻守の中心"でした。まだまだ、周囲の選手が"藤田の味"に慣れてない面もありますが、それでも、移籍当初に期待していた以上に機能していました。
 ポジションは右サイドのMFで引き気味。ボランチ的な仕事をこなしつつ、持ち前のフリーランニングでゴール付近まで突入することもあります。ボールタッチが的確で状況判断が早いため、藤田を経由するとボールがスムーズにつながります。役割的には、磐田時代より過酷かもしれませんが、それでも必死にこなしてしまうのですから・・・。とても33歳とは思えません。中でも、フリーランニングでスペースに飛び出すセンスは、日本最高の"職人芸"といっても過言ではありません。ちなみに試合は2対0の快勝。磐田としては、屈辱的な敗退でしょう。

 2年前、日本代表に復帰した頃、「2006年を考慮すれば、藤田は高齢だ」という意見がありました。それに対して藤田は「人を年齢で判断しないでよ」と言っていました。
 昨年末、磐田で補欠になり始めた頃も、「衰え」が話題になりました。その藤田が名古屋で「衰えを感じさせない」プレーでチームに貢献しています。
 改めてサッカーの見方は人それぞれ。難しいものだと思います。

 走るスピード、肉体的な強さなど個人的な身体能力だけでサッカーができないということを痛感します。言い方をかえれば、「頭の良さ」も重要ということです。

 藤田という文字通りの「司令塔」を得た名古屋は、まだまだ向上する可能性があると思います。また、藤田からすれば、すべきことが多くて、あと数年は"衰える暇もない"という感じではないでしょうか。
 2年前、オランダで「何歳くらいまでできると思う?」と問われ、「35歳くらいまで」といい、「当たり前じゃん」と返されたことがあります。現時点で、僕の予想以上に衰えません。今では、まあ、40歳くらいになった頃、草津あたりで会えれば・・・・温泉も楽しめて良いなあなんて思ったりしますが、こんなことをいうと「冗談じゃない。J1で優勝を目指しているよ」なんて返されそうです。実際、僕自身、心の中では「衰え予想」を裏切り続けてくれることを期待しています。
 小柄でフィジカルが弱い分、人一倍、衰えない。「小さな鉄人」です。そのうち機会があれば、柏に来てもらえないものか・・・・。

 では、一方の磐田はどうか。両サイドアタッカーの動きが「縦」中心で単調なのが一番の問題ではないでしょうか。2人とも藤田より、走るスピードや肉体的な強さは勝るでしょうが、既述したフリーランニングなど試合状況を見据えた上での効果的な動きが足りません。単調であっても、個々の力で相手をかわすことができれば問題ないし、得点チャンスも作れますが・・・。かわせない場合は手の打ちようがありません。では、その際どうするか。ポジションチェンジやパスワークで相手守備陣の連携をゆさぶるわけです。かつての磐田はそれができたゆえに強かったのですが、今や、目指すサッカーが違うようです。

 ところで、試合後、藤田は磐田ファンが集まっている席に挨拶に行き、その後、名古屋ファンにも挨拶。結局、ピッチを1周"ビクトリーラン"しました。磐田ファンの席には長年の活躍に感謝する横断幕があったのです。さすが、磐田ファンという感じです。
「試合前に気づくべきだったけど、そんな余裕が無かった。それだけ緊張していたって、ことでしょう」〈藤田〉
 見方しだいでは、藤田は「チームを裏切って移籍した」選手ゆえ、どんな反応があるか気になっていたのかもしれません。

PS 夏休みはインターハイやら大会が目白押しです。指導者の方々には個々のフィジカルばかり見ないで、藤田のような選手もいるかもしれないという点を意識してほしいものです。ちなみに、僕が藤田を初めて見たのは、彼が高校2年生。高校選手権で優勝した当時でした。小柄で細かったです。以前、「フィジカルが弱いから、今がある」と言っていました。「フィジカルで勝てないから、考える」ということです。かつて、東海地方のトレセン担当をしていた人がいっていました。「藤田はあまりに小さいので、将来は厳しいと言う指導者もいた」、と。ちなみに、女子では、個人的な面識はありませんが、ベレーザの酒井さんが"藤田的"存在だと思います。トップスピードといいたくないほど、足は遅いです。でも、すごい選手です。
 もうひとつ、藤田を見習ってほしい点。彼は清水市で小学校、中学校、高校時代をすごしました。現在、サッカー界も、"Jの下部組織"など"お受験"ブームのようですが、エリートコースがすべてではないと思います。

(2005年7月26日記)
文=木次成夫

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