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Vol,73 (全国高校サッカー選手権取材記)2006年1月5日 市原臨海競技場(06 Jan,2006)

2006年1月5日
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 1年前のちょうど同じ日、観ていたのは第83回全国高校サッカー選手権大会準々決勝。駒沢陸上競技場でのゲーム。多々良学園(山口)は、その年優勝した鹿児島実業(鹿児島)に1-2で悔しい逆転負けを喫し、姿を消しました(取材ウラ話Vol.51にその時のことが書かれています)。そして1年後のこの日、再び準々決勝までコマを進めてきた多々良学園。相手は、2年連続2回目の出場となる鹿島学園。初出場となる前回は初戦で国見(長崎)と対戦、0-5と大敗して涙をのみました。前回大会の悔しい経験をバネにここまで勝ち上がってきた2チームの対戦となった今大会準々決勝第1試合は、シーソーゲームとなりました。

 コイントスでアウェーユニフォームを着ることになった多々良学園の白井監督は、「前回大会で鹿児島実業に敗れたときも白(アウェーユニフォームの色)だった。これには先輩たちの悔しい思いがこもっているぞ」といったことをいって選手たちをピッチに送り出したとか。もはや伝統と言ってもよい、ピッチ全体をバランスよく使うサッカーは今大会も健在。ロングボールや浮き球を減らし、短くダイレクトに展開されるパスは非常にリズミカル。前半12分、右サイドからのボールを齋藤達也選手がオーバーヘッドで決めた先制ゴールは、このリズムに乗っているように見えました。対して鹿島学園は個人技で応戦。「平均身長が170pしかない最終ラインは珍しいのではないか」と監督が謙遜する多々良学園のDFラインは、組織で守って決定機を与えずとも、鹿島学園のオフェンス陣を捕まえきれません。そして後半早々、鹿島学園がサイドからのアーリークロスを頭で叩き込んで同点。決めた佐々木竜太選手は去年から背番号10を背負っていたチームの顔。鹿島学園応援席にある「スーパーストライカー竜太」の横断幕に偽りなし、です。互いの色が出た試合に決着をつけたのは、後半22分、右サイドからのセンタリングに石田聖雄選手が頭で合わせた勝ち越し弾。1年前のちょうど同じ日、鹿児島実業に同じように右サイドからのボールを頭で合わせられ決勝点を許したシーンが脳裏をかすめたのは自分だけでしょうか。まさにあの日から1年、今度は2-1で勝利を手繰り寄せ、一歩先へ進んだ多々良学園。13年連続出場、ライバルがいない一方で、サンフレッチェ広島ユースという強豪チームに選手が流れやすいという地域独特の難しい事情があるなか、アミザージFC(山口市内を中心とした少年サッカークラブ。U-15まである)に高校のグラウンドを提供し、サッカー少年たちとコネクションを作ったり(実際今年のチームにも2名のアミザージFC出身選手がベンチ入りしている)、練習環境を整えたりした努力が実った山口県勢56年ぶりのベスト4。立派なことだと思います。ちなみに、1年前のコラムに書いた「試合中の円陣」はまだ継続中とのこと。準決勝、もしくは決勝でチームの和を確かめる多々良学園の円陣の姿がテレビでも見られるかもしれません。

 第2試合は、民族学校として選手権初勝利を挙げて勢いに乗る大阪朝鮮(大阪)と、「高校サッカーに革命を起こしたい」と今大会、旋風を巻き起こしている野洲(滋賀)という話題校同士の対戦。1980年代っぽくもなく、いまどきでもない大阪朝鮮の応援は新しい風を高校サッカー界に持ち込んでいるのを象徴しているようでした(蛇足ですが、なぜか運動会の雰囲気を思い出しました)。ゲームはフィジカルを前面に打ち出す大阪朝鮮と、「クリエイティブな攻撃サッカー」を標榜する野洲のタイプの全く異なるもの同士の対戦。大阪朝鮮は、きびきびして意思統一された動きに加え、1対1に強い……、とここまではイメージ通りなのですが、「これまでの朝鮮高校の伝統を引き継ぎつつ、自分の色として、特にスピードあるサイド攻撃を練習してきた」(大阪朝鮮・康監督)と言う通り、速いパス連係や鋭いサイド攻撃も見られてチーム戦術の面でも目を見張るものがありました。

 試合開始からフルに動き回り、前半15分に右サイドからのセンタリングをあわせて早々と先制。しかし、一方的な展開になるという空気にはなりません。野洲は、サイドの空きスペースをつく"洗練された"(という表現が妥当かどうかわかりませんが)サイド攻撃や、中央からは思い切ったドリブル突破を試みるなど、創造性に富むサッカーは確かに噂どおり。相手のプレスをかいくぐる落ち着いたボール回しは、どことなくJクラブの匂いを感じさせます。ボールを効率的に回す野洲に対し、全力でプレスに向かう大阪朝鮮。これでは後半体力が持たないのでは……。「相手の4バックがコンパクトだったので、前半は縦へのボールを増やして相手のラインを下げたかった」とは野洲の山本監督、試合後のコメント。後半に入り、サイドチェンジを多用するようになると、大阪朝鮮は、よりボールに振り回されるようになります。「中盤でタメを作ってから攻め急がずにリズムを作っていけた。(相手の)逆をとることで少しずつギャップが生まれ、そこを突いていけた」(山本監督)。大阪朝鮮も粘り強い守備で対抗しますが、ついに後半32分、野洲のサッカーが実を結び、スルーパスから同点ゴール。PK戦にもつれ込んだ好ゲームは、野洲の勝利で幕を閉じました。「相手のチームスタイルはフィジカルの強さという対極的なもの。自分たちのサッカーを証明したかったので、結果が出せてよかった」(山本監督)野洲は、無欲での国立行きを決めました。雄叫びを上げて喜ぶ選手たち。歩けなくなるくらい泣き崩れる選手たち。試合後のベンチ裏は、新旧の高校サッカーの姿が交錯していました。
(余談:この試合、気になったのが両チームの背番号9。後半から投入された大阪朝鮮の9番は、身長186p、体重78sの巨漢。しかも名前がパク・チソン。それだけで威圧感があるんですが、しゃにむにゴールを狙わず、攻撃のポイントとなってチームプレーに貢献。一方野洲の背番号9は、ジェフ市原千葉に入団が内定している青木孝太。市原臨海競技場といえばジェフのお膝元です。スタンド隅にあった「WELCOM TO JEF UNITED KOTA AOKI 9」という横断幕に後押しされたのか、鋭いドリブルを何度も見せてくれました。)

(2006年1月5日記 伊藤亮/写真 長濱耕樹)

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