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Vol,75 (全国高校サッカー選手権取材記)2006年1月9日 国立競技場(10 Jan,2006 UP)

※画像クリックで大きな写真が閲覧できます 2006年1月5日
2006年1月5日
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2006年1月5日
鹿児島実業高校対野洲高校
「前日に鹿児島実業(鹿児島)のこれまでの試合のビデオを見た。前半15分の戦い方を見て、負けるな、と思った」という野洲(滋賀)の山本監督。それほど鹿児島実業の攻めというのは圧迫感があるわけですが、野洲がとったゲームプランは、あくまで自分たちの強みを全面に押し出していく、というものでした。

 試合開始直後は、決勝戦というプレッシャーからか、いつもとちがってぎこちなく見えた野洲イレブンの動き。鹿児島実業は、パスでつなぐ野洲のサッカーを見越して、前線から執拗なプレスをかけました。本来ならここで浮き足立ってしまう場面。ひとつミスをしたら即失点の危機になってしまうのは明らか。
 しかし、それでも野洲はいつものサッカーを貫きました。前半も10分を過ぎたあたりから、自分たちで本来のリズムを立て直していきます。しかし鹿児島実業も、ここまで無失点の守備。1対1の強さとカバーリングの徹底で、相手にスキを与えません。結果、ゴール前まで迫る回数は鹿児島実業のほうが上でした。
  しかし、今大会再三キレのあるドリブルを見せている青木孝太選手の切れ込みから野洲がチャンスを迎えます。前半23分、右サイドで1対1を挑んで得たFK。一度クリアされたセカンドボールが再び右サイドへ。ダイレクトでファーサイドに上げられたボールに荒堀謙次選手が頭で合わせゴール。最初のクリアと同時に鹿児島実業DFのラインが上がりかけた瞬間、スポットができてしまいました。そこにダイレクトで繋げたという点で、野洲の技術の高さが伺える先制ゴールでした。

 この試合見応えがあったのが両チームの両サイド。同じシステムで、ともにサイド攻撃に重点を置いているとあれば、両サイドの攻防がカギを握ります。前半は鹿児島実業の左サイド、野洲の右サイドがポイントでした。鹿児島実業の豊滿貴之選手が、左サイドから再三チャンスを演出すれば、野洲はそのウラのスペースを狙ってFWが開いたり、乾貴士選手がポジションをチェンジしてドリブル突破を試みたり。後半は、野洲がサイドチェンジすれば、鹿児島実業はゲームメーカーの赤尾公選手が両サイドにボールを散らす。お互いサイドを攻略するための駆け引きは、この試合の一番の見所だったと思います。

「これまで無失点できているチームから点をとって、落ち込んでいる間に追加点を奪えば、後半バテても殴り合いで勝てるかな、と思っていた」(山本監督)。しかし、鹿児島実業は、落ち込んだ様子を見せませんでした。「前半は攻めの起点ができなかった。後半飯森(裕貴選手)を入れてから起点ができ、MF、DFの押し上げができてチャンスができた」(鹿児島実業・松澤総監督)。しかし、この試合は野洲の守備が光っていました。DFラインを必要以上に下げず、コンパクトな状態を保つことでボランチも加わって懸命に守る。システム上ではそのようになりますが、何度もゴール前に進出する鹿児島実業が得点できないのは、野洲の技術というより「粘り」に理由があったと思います。しかし、後半34分、その粘りを鹿児島実業の執念が上回りました。CKからの攻撃を跳ね返されること2度、そして3度目のトライで迫田亮介選手がヘディングでゴール。怒涛のように圧して圧して寄り切った形は、これもまた鹿児島実業らしいプレーでの同点弾。試合の流れは、これでまったく分からなくなりました。

 45分ハーフの決勝を戦い抜き決着つかず。試合の行方は、10分ハーフの延長戦へ。疲れが出るのは、相手のパスに振り回されている鹿児島実業かと思いきや、逆に猛攻に出ます。運動量が落ちる気配は決してなし。野洲も疲れはあるはずなのに、どんなに攻め込まれても、それでも後方からのパスサッカーを貫きます。このままPKかと思われた延長後半7分、一本のサイドチェンジが、全てを変えました。野洲キャプテン金本竜市選手が、右サイドに糸を引くような高速のロングパス。これが合図かのように走り出す野洲イレブン。3人が絡んでドリブルとパスを織り交ぜ右サイドを突破すると、ダイレクトでセンタリング。決勝点を決めたのは、これで準々決勝以降3試合連続となる瀧川陽選手。まさにこれまでの野洲サッカーを凝縮したようなプレーで優勝ゴールを奪いました。

「パワーやスピードでは(相手に)上回っていたと思うが、精度が違った。こっちはクロスが引っかかってしまったり、いいクロスが上がっても誰も走りこんでいなかったり。(累積警告で出場できない)栫(大嗣選手)なら走り込む動きができたが……」と連覇を逃した松澤総監督は悔しそうに唇を噛みました。試合終了とともに、ピッチ上の11人全員が倒れ伏した鹿児島実業イレブンの底なしのスタミナには、改めて驚かされました。そして、これまでのパワー系サッカーに対抗し、技術の質で頂点を極めた野洲高校。「チームは一戦一戦強くなっていった。DFが課題だったが『野洲のサッカーをするためには、1試合のうちに何分ボールを持てるかがポイント。そのためにはDFが大事』と言ってきて、チームとしての完成度が上がった」という山本監督。今大会の野洲の優勝は選手の育成面も含め、高校サッカーに流れを作るきっかけになったと思います。今後、はたして野洲のようなサッカーをする高校が増えるのかどうか。すでに次の大会が楽しみです。

(2006年1月10日記 伊藤亮/写真 長濱耕樹)

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