講談社BOOK倶楽部
講談社創業100周年記念企画「この1冊!」

  

第30回募集選考

2011年5月到着分を対象にした、第30回募集の選考結果です。

総評

今回は、最終選考ということもあり、小説96点、カバーアート104点もの応募があった。
だが、残念なことに、両方とも受賞者を出すことができなかった。

小説に関しては、一次選考通過作というか、これからもあきらめずに書き続けてほしいと思う6人の方には長めの選評を、そして残りの全員の方にも短いコメントを付けることにした。
講談社Birthに最後までお付き合いくださった応募者の皆さまへの感謝の気持ちを表したかったが、手厳しい意見もある。それは愛の鞭だと思って、お許しください。
もちろん、コメントはそれぞれの作品に対して付けられたものだが、全部のコメントが自分の作品にも該当すると思って、ぜひ皆さんに読んでほしいと願っている。そう思える繊細な人でないと、なかなか小説はうまくならない。
サッカー日本代表の本田選手が、一部の人としか戦術の話がきちんとできないようなことを言っていたが、すべてそういうものだ。あそこが悪かったと言ったときに、悪かったポイントがわからない選手には上達はない。本田と話ができる人だけが、世界で通用していくのである。
まあ、編集部は本田ほどスーパーではないので、余計このコメントくらいは理解できなければダメだろう。たとえ、すぐに理解できなくても、理解できるまでずっと考えてみることも大切でもある。

カバーアートに関しては、比較的良かったお二人の方には選評を付けている。ので、こちらも参考にしてほしい。
ただ、小説よりも簡単に描けてしまうからだろうか、何のために応募しているのかわからない人もいたのは残念だ。受賞する気持ちがないのなら、ネットに自作品を貼り付け、誰かに見てもらう可能性をさがした方が、よほど健全だ。
アートは感性だから、もしかすると評価してくれる人がいるかもしれない、という考え方は、世に出る資格を欠いているとも言えよう。アートほど、論理や勉強や鑑賞が必要なものはない。上村松園は、何かあるとすぐに見に行ってデッサンをしたという。デッサンがアートの基本であることも忘れないでほしい。

最後に、最終選考まで、たくさんのご応募、ありがとうございました。デビューした方を忘れることなく、これからも応援してあげてください。よろしくお願いいたします。


講談社Birth編集部一同

次点

編集部からのコメント ユニークでおもしろい発想がどんどん出てくる人なのだろう。めちゃくちゃな気もするが、紙一重のところで読み物として通用している。ただ、この手の作品はハチャメチャでもいいが、読み終えた後に何らかのカタルシスがないといけないのではないだろうか。作者が何のためにこの小説を書き、読者に何を訴えているかということとも、それは関係していると思う。
編集部からのコメント 何度目かの応募の方。いつも悪くはないのだが、だからといって強く推したいと思えないのが残念だ。このまま歳を取ってどんどんうまくなっていつかデビューとなるのかもしれないが、大きなチャレンジを自分に課して、ぜひ大きく成長してほしい。この作風のままだと、小説誌の新人賞に応募する50代の方などと比べられ、いいことはないような気がするので。
編集部からのコメント 一生懸命何かを書こうとしているし、鳩がしゃべる出だしも悪くない。ただ、空回りしている感じがする。この人の書こうとしているものは、先輩たちが書いてきたものに近いので、昔ながらのいい同人誌を探し、そこに参加して文学を語り合ってみるといいのかもしれない。自分を磨くことが作家には必要なのだから。
編集部からのコメント 時間切れか……残念! 出だしの2章のバトルなど、とてもいい。梗概を読んだらわくわくしたが、途中から物語を無理に展開させようとして、梗概どおりの意図にならなかったのだろう。もう一回しっかり書き直して応募してほしいと思ったが、Birthは今回が最後。だから、「BOXーAir新人賞」にぜひ応募してください!もちろん、後半は考え直して。
編集部からのコメント 色を使った発想は良かったが、そこで起きている差別が、アパルトヘイトとかでありがちなものになっているのは残念。また、集う仲間たちのキャラクターにもう一つ工夫がほしかった。なぜ、彼らが「白」組なのかもはっきりせず、人物が際だたない。ただ、楽しく読める作品ではあるので、頑張ってください。
編集部からのコメント 真摯に小説の役割を考えて書いているのがよくわかる。ただ、出だしはいいが、途中からストーリーがありきたりになってしまう。また妊娠の部分など、書かなくてもいい部分を書き込みすぎている。このテーマなら、YA向きに、読者を高校生などに設定し、3分の2くらいで書くほうが伝わるような気がする。あなたのメッセージにも、その方がふさわしいのでは?

最終回なので全作品にコメントを書かせていただきました。

『偽似神話』媽祖媽祖

オリジナリティを出し切れていない。雰囲気がいいのは、ステレオタイプゆえが多いことに注意して!

『蓮』川内春奈

うまくまとめようとして失敗したのだろうか。ストーリーもよくあるもので、個性が感じられなかった。

『5分以上の友達』細川奈々

「人の心を読むことができる人間」の話と聞いて、心躍る読者はいるだろうか? もっとチャレンジしてほしい。

『死なない少女と曖昧アンドロイド』美崎あらた

「ワケありの僕と死なない少女」という発想は良かったが、このラノベ風物語にしてはキャラクターが弱い。

『量子悪魔の法悦』八千代優

設定がひとりよがりな印象。実際に起こりえない話ほど、細部はリアリティを持たせ論理的な展開をすべき。

『スカウト』岩崎亮

女の子の魅力は、説明するよりも、思いもかけない仕草や発言を描写する方がキャラが立ってくる。

『600分で始められる爆弾を止めるよりもスリリングなロマンス』英雄飛

展開はよく考えられているが、文章にリズムがない。名作・名文を声に出して読んで勉強するといいと思う。

『半円・円・三日月』亜夷舞モコ

規定枚数に達していないのは、大きなスケールを自分に課していないから。殻を破らないと成長はない。

『ハーフウェイボーイ』義士歩

他人の話をお金を払ってまで聞きたがる人がいるだろうか。自分のために書くなら、もっと内面を抉らないと。

『Distance between us』吉川祐作

多作である必要は決してない。おもしろいアイデアが出るまで、悩み考え続ける勇気も大切だ。

『誰もいない円環』大貫貴弘

枚数が足りないに規定に達しているとせずに、最後まで頑張って書き直してほしかった。

『僕の中のもう一人の僕』木志博志

しっかり考えて書こうとしてはいるが、最後まで読ませる描写力が必要。ラストもこれはどうなのかと思う。

『その音はナニを打つ?』あかつき

文章のリズムが悪いので読みづらい。名文を書き写すか打ちなぞるかして、体で覚える必要がある。

『夏休み。先生日和』橘アユム

会話は軽くても地の文は慎重に書くとかしてメリハリをつける必要がある。平板な印象のまま終わりまで行く。

『キャッチボールをもう一度』武鈴香

描こうとしている家族の関係性が平凡になってしまっていて、読者にとってフックとなる部分がない。

『刃に映す陰、タイ捨の意地』弓山佑機

今までの応募作と評価は変わらず△。もっと違うふうに書きたい、という思いが感じられないのは残念。

『河童と祖父の類似性について』坂十一

いい雰囲気を醸し出すことはできているが、この内容と物語なら、半分の枚数にできないければいけない。

『the Teen party』一瀬夏海

高校生たちに起こるトラブルやトラウマが、現実にありそうな程度では、おもしろい小説にはならないのでは?

『エクスペリメント・セブンティーン』下霧ぱぶろ

規定枚数を確認してから応募しないと、どこの賞でも相手にはしてくれないので気をつけましょう!

『ウマカケルヒト』改井秀次

馬が出てくる場面はうまいのに、日常の会話などになると急に幼くなってしまっているのは残念。

『幸虚無』渡琉夏都

非常に読みづらかったのは、登場人物の名前のせいだけではない。古典的なファンタジーに接してほしい。

『自治区抹消』甲本直孝

長々と書きすぎているため、おもしろさが伝わらない。とくに出だしはもっとスピーディに行かないと。

『ドールハウスと現実と』水神のぞみ

まだ若書きの印象が残るが、情熱が感じられるので期待。設定も工夫があるが、文章の訓練を。

『死と眠り』賽乃目始弄

地の文が一人称になっているのだが、そのキャラクターが反映されていないので、読みづらくなっている。

『勿忘菫』浮白双紙

男の側の願望を描いてはいるだけなので、読者を限定する。また、恋愛対象の女性が魅力的ではない。

『飼いにくい魚』鈴木雄介

違う地点にいる二人の接近を構成を考えて書いているが、起こる事象をもっとおもしろくしたほうがいい。

『ピエロとコイン』林ジャズ

高校生によるサバイバルな殺し合いという、読んだことのある設定で、過去作品を超えられなかった。

『ワールドフラクション』鴉川九郎

いわばあるトラウマを克服しようとして頑張ろうと決めたという話。その後、どうなるかを中心に書くのが小説。

『レウィシア』亜希月蘭麻

雰囲気のまま書いてしまったファンタジーで、習作としては悪くないが、その世界から飛び出すことが大切。

『ゴールデンチャイルド』七橋なおき

長いのでダラダラとし飽きてしまうのは、最初におもしろい謎やユニークな風景が来ていないから。

『星に願いを』越野洋平

雰囲気はわるくないが、この内容でこの長さはどうか。タイトルも含め、あまりにも普通過ぎないだろうか?

『「学生時代」』青山YURI子

テーマはいい。だが、まだ小説として単調になっている。ただ、この人には、ぜひ書き続けてほしいと思った。

『リテラリー・ガベージ』比田井航也

こういう普通の日常を描くのには、いちばん力のいる仕事。このテーマを目指すなら、精進あるのみ。

『秋やん』香港・YT

青春小説としては普通にうまくできているが、それ以上でもそれ以下でもない。また、長すぎる。

『長電話ラプソディー』おうじ

ストーリーも単調だし、もっと工夫がほしかった。頭だけで書かずに、ディテールを描写できるように。

『赤い月と腐海は、永遠に番う』神代朔

事件を描いた部分は良くできているから、内面をあえて描かずに自分のテーマを描くすべを見つけてほしい。

『俺とクロと不思議なカミコ』神谷かんな

高校生にしては(というのは失礼かもしれないが)よく考えている。もっと大きな謎解きを狙ってほしい。

『福耳と金色の猫をめぐる風景』志村いづみ

福耳と猫という発想で書こうとしたのかもしれないが、そこで止まってしまっている。もっと独創的に!

『アブクの名』明香

トラウマを持つ主人公にどういう視線で書いていくのか、よくあるテーマに留まっていて、感動が少ない。

『透明なサルビア』冬原一弥

姉弟の愛、トラウマからの脱却、家族の物語、と書き変えると、平凡に見えてしまうことを知ってほしい。

『ゴーマイウェイ』清瀬まな

登場人物たちがあまりに普通で、これでは読者はついてこないのでは? もっと工夫がほしい。

『タクシードライバー』アサダマオ

古い客の入らなかった映画を見ているような小説。音楽も小説も最先端を目指さないといけない。

『本に捕われた少女』ねむり丸姫

トラウマとかコンプレックスとかそういう世界は狭い。その狭さをまず否定し考えていくかが小説への第一歩。

『素麺と蜜柑』奈川乃衣

なぜこの年齢の男性の主人公を20代の若い女性作者が描く必要があるのだろうか、が見えないと。

『つきしろ』金森千尋

小説の長さで児童書・童話の内容を書くのはダメ。童話の長さで小説より深いものをまず書いてみては。

『そこはかとなく、ヘヴン』向麻友子

おもしろい発想だが、そこまでで留まってしまった。驚きいっぱいの事件などが展開しないのが悔やまれる。

『エリーはスポットライト』上山知也

悪くはないが良くはない小説の典型の一つだろう。雰囲気はあるが、そこから作者が出ようとしていない。

『リマインド』土田雄一

自殺・偶然の出会い・家族の死・心の傷……、周りの友人たちはこういう小説を買うだろうか?

『スクールアウト』大竹マサシ

粗い小説と荒削りの小説はまったく違う。まず多くの名作を読んでその違いを実感してほしい。

『オランダ絵画の謎』スィーニュ・ピエール

せっかくパリに詳しいのに、パリの風景が目に浮かばない。フランス人もうまく描かれていなかった。

『ルーデンガルフの伝説』渡辺卓哉

会話の文体がありきたりで、みな同じようなので、キャラクターが生きてこなかった。

『ボンヘキ』大徳詩文

最初の説明からして抽象的すぎる。読者の心をはじめに掴む必要があるのに、そうなっていない。

『時を刻む人』羽咋ルリ

SFやファンタジーは、設定された世界観の科学性なり論理性が非常に大切。頭だけで書くと失敗する。

『ボーンファイア』七重隆

父と子の物語を描くのに、ミステリーを持ってきたのは良かった。もっとビックリするなトリックだったら……。

『空に水車を』はたく

この手の昔の村上春樹風の小説は、並大抵の文章力でないと。長さもこの内容なら30枚の短編に。

『闇の商売人 クロガネ』和田一志

文章があちこちの飛んでしまう印象がするのが残念。構成ももうひとつ考えてくれればと思った。

『無花果からの秋便り』杠雅

複雑でおもしろいミステリーを作ろうとする気持ちはOK。最初にユニークな風景を持ってきてほしい。

『セカンド』藤川悠

最後まで読んでも、このGKのうまさがわからなかった。プロの違いは何かをよく考えてほしい。

『オン マリ シエ ソワカ』秋山りん2

共著ということだが、二人のとんがった部分がよりとんがるのではなく、中和されてしまった印象だった。

『ハロウ・グロウ』朝永しまこ

文章もうまく軽快で読みやすい。内容も普通より上。でもそれ以上行くパワーと想像力を感じなかった。

『人生めいろ』さとみ彩

ずっと同じ温度が続いている気がする。楽しいとかおもしろいとか感じにくいようにしてしまったのでは?

『霊氷』崎田圭人

出だしの発想はおもしろかったが、それ一発だけで、読み進むにつれ平凡な小説になってしまった。

『ハブアグッドムーン,ミスター・アームストロング!』山桜隼二

自分に酔って書いている感じがしてしまった。わかってもらえないかもという恐怖を感じる繊細さが必要。

『EVIL★SIGHN(イヴィル・サイン)』哀橙憂希

抽象的ではないのだが、表現にメリハリがないので、だんだん作者の書こうとすることがわからなくなる。

『竜の心臓』河原友哉

作者の頭の中にある設定が読者にきちんと伝わるようになっていないため、非常に読むのが大変だった。

『ヘイ ダディ』静岡県・SK

これを時系列を変え200枚にまとめたら、どんな小説になるだろうか。まずはそこから挑戦を。

『逆ストーカー日記』田中パセリ

彼氏の浮気がばれる所までは少し長すぎるが良かった。そのあとの展開をもっと磨いていけば……。

『ハハハ───』浅間コータロー

連作ではなく長編を、構成を考えながら書くように習慣づけないと、同じ場所からは脱出できない。

『悪霊の慈愛』若杉いをり

決して悪くはないのだが、逆にこれはすごいと推したくなる小説ではなかった理由を考えてほしい。

『ふることふみ』多葉井憲典

歴史に材を取っている以上、実際の歴史・神話よりおもしろい・意外だと思わせる内容を目指してほしい。

『We Are Enpty World』来栖雅

読んでいて1文1文はわかるのだが、長い段落が終わると「何だったっけ?」となってしまうのは、良くない。

『深海魚の足の裏』佐藤浩介

まだ小説を書き始めたばかりの印象。登場人物の名前や発言ひとつにも、これでいいか悩んでほしい。

『向日葵が咲く頃に』小山祐介

大学生の頃を思い出す書き方はダメ。いま生きていて悩んでいることにぶつかっていく勇気を持とう!

『僕らのコトバ』小町想架

ファンタジーで人間の内面を描こうとしたのはいいが、逆にどちらも中途半端になってしまった印象だった。

『離島物語』濱田語録

連作短編にせず長編で構成を考えれば、もっとよくなったのでは。今のままでは弱い。作中劇もよくない。

『銀色夜叉』岡村勇作

自分ひとりの世界という気がする。こういう世界を表現するのは非常に難しく、人一倍の努力あるのみ。

『脱走者』鈴鳴月

登場人物の設定は良かった。キャラクターはもっとメリハリ付けて。ストーリーにもひと工夫を!

『腐った青春の日々を彩れ』潮戸照明

発想と書きたいことはいいけど、やっぱり退屈では。自分の見聞を生かした、おもしろい蘊蓄も必要では。

『クレイジーユーザー』ごくう

途中なのは仕方ないが、ミステリー的なおもしろさを表現しようとしていないような気がする。

『莢蒾の詩』湖山憲

韓流ドラマのようで、この手の小説なら受け入れてくれる賞が他にあるかも。雰囲気はいいので。

『One night magic』朝倉春

宮崎駿さんが「火を焚いたことのない人間は焚き火が描けるわけがない」と言ったのと同じような感想だ。

『細く、つたない、どこまでも曖昧な繋がり』飯島要一郎

きちんと情景を描写しようとしているのは感心する。ただ、物語にメリハリがないので、長く感じてしまう。

『脳うなぎ』山中望

病気を扱うときは、科学的な根拠と症状ゆえの社会からの偏見をしっかり勉強してからでないとダメ。

『籠の中の鵺』涼森夏

西尾維新ファンらしき小説だが、名作を読んで、ユーモアと本格ミステリーをもっと力を付けてほしい。

『何もわかっちゃいない』高橋遼来

15歳を主人公にしたなら、15歳に読んでもらえる小説にすべき。もっと今の自分を見つめて書いてほしい。

『罪の果て』大江憂歌

おもしろいことを書こうとしているようだし、ユニークな発想もあるようだが、名作を読んで文章力を付けて!

『戦国の女神』宮脇葵蓮

この主人公を選んだセンスはいい。女性からの視点を強くしてほしかったし、時期を絞った方が良かった。

『baka』三浦海

文章にテンポが足りず、場面にメリハリがないため、おもしろさがまだ足りない。設定など悪くないが。

『10-ten-』サカイキョウコ

昔を振り返る形の小説は、結論が見えているような気がして、おもしろみに欠けやすいので気をつけて。

『瀬戸際高木神防衛軍』大友順貴

一般人から見たホームレスでしかないので、主人公に入っていけない。実体験までしなくてもいいが……。