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第十一回“Powers”全小説講評『フィリピーナ』細かい描写は真に迫り、読ませる内容だった。が、全体を俯瞰すると起伏が甘く、挿話ごとの繋がりが弱い。「小説(フィクション)」として完成度を上げるなら、後書きにあった思いがテーマとして明確に浮き上がるよう構成を再考してほしい。 『ハーピュリア』ハーピュリア人の設定は面白いが、それを読み手に理解させるのに時間がかかりすぎていて、ただでさえ難解なSF世界観のハードルをさらにあげている。志向もあるとは思うが、もう少しとっつきやすい設定で読者の目線を意識したものが出来たらまた送ってほしい。 『碧眼のペテン師』主人公が所属するそれぞれのコミュニティ(家族、会社、学校)での立ち振る舞いをうまく描き分けられており、キャラクタに華を感じた。衛星での監視や殲滅戦など、道具立ても派手で気持ちよい。一方で、一本道なストーリーや単純な犯罪構造など、背景の弱さが気にかかった。 『白い少女と白い鎖とチマナコ』現代風にアップデートされた孤島ミステリ。キャラクターの強調と整理が必要。 『空夢』読みやすい半面文体があっさりしすぎ、もっと書き込みを。構成、内容ともに既視感あるのでオリジナリティがほしい。 『中国遊学 ─国を旅して、学んで楽しんで─』定年退職後の中国留学、中国旅行について書かれた自分史的レポート。講談社BOX新人賞Powersはフィクションの賞ですので、残念ながら評価はできませんでした。なお、原稿表書きに「“流水大賞”応募」とありましたが、講談社BOX新人賞Powers応募作とさせていただきました。 『権謀症』覚醒能力の定義が曖昧。戦いを扱った小説の場合、制約がゆるいと話の展開に緊張感がなくなってしまう。「後天的に超えることの出来ない格差」について、最初から深く踏み込めればより面白くなったのでは、と個人的に思う。ぜひまた送っていただきたい。 『錯綜世界のコンフリクト』センスは良いが、展開が遅いのが勿体無い。幻想的な冒頭シーンはそのまま残すとしても、本パートの頭で怪事件が、もっとインパクトある方法で提示されるべき。全てのキャラと少しずつ距離をつめていくと時間がかかるので、できるだけ省いて、早く本題に入る工夫を。 『サンテ・アポリカプス(聖なる黙示録)』文章力は高いし詩的な表現は読ませるものがある。ただ、天使と悪魔の戦いに巻き込まれる主人公、というのはよくある設定なのでもう少し設定から練ってほしい。 『流刑天使』小説としてしっかりしてはいるが、お話の構造として古さを感じる。 『すみません。前回の書き直しです。それはともかく、今年もお疲れ様でした。』中身にタイトルほどのインパクトがない。であればまともなタイトルにするべき。 『アリスミティックサーキット(仮題)』タイトルは確定させてください。また、原稿も応募時点で完成しているものを応募してください。著者自身が「未完成」としているものについて、評価はできませんでした。 『昇天遊戯』どこで誰が何について話しているのか、見えてこず物語に入り込めなかった。世間話も終盤に活きるわけでもなく、単発的なもので残念だった。全体的に展開が単調。読者にページをめくらせるような謎を、ある程度の間隔で盛り込んでほしい。 『死を諭す為に神は笑う』章の最初と締めのセリフは気が利いているが、単純に文章の技量不足が目立つ。人物を魅力的に見せるには、どのキャラに視点を据えるべきかや、読者を疲れさせないで設定を説明するにはどのタイミングが適当なのか、などなど、考えるべきことはたくさんあるはず。 『半銃のガバメント』長く使われた銃が人の形で具現化するという出だしは面白かった。このキャラ同士のまさに「銃活劇」にもっていけばよかったのでは。幻想世界の魔王や住人が現実へやってくるというそのあとの展開が風呂敷広げすぎだったように思う。 『yesterday』頭の中だけで話を作りすぎ。この年齢でしっかり書けているところには好感を持てた。どんどん書いてみてください。 『聖人の森』これだけの壮大なストーリーを読ませるには、工夫が必要。メインストーリーが始まるまでがだらだら長いので、リベリオン滅亡後から始めるべきだった。 『巨大魔法少女VS俺』小気味のいい文章は将来性を感じる。ただ、「人類の男性を魅惑し逆ハーレムの世界を作る」という巨大魔法少女の設定部分が弱く、小説内におけるキャラの切実感の乏しさにつながっている。強固な世界観は物語自体の駆動力になるので、上手に作りこんでほしい。 『心の通う国防を』1章2章はとてもよかった。終盤があまりに尻切れだったのが残念だった。個人的には、壮大な計画は設定だけにとどめて、編集部と小隊の日常に焦点を当てたほうが楽しいものになりそうだと感じる。 『暗行御使の秘密』文章が大変読みやすく、人物の数や話運びにも無理がなく、資料にもたくさんあたられていることが伺える、好感のもてる一作でした。反面、丁寧すぎて斬新さに乏しく、講談社BOX作品としての刊行イメージは沸きませんでした。主人公の性格にもっとリアリティがあれば、もう少し生々しく感情移入させることができたかも。作中でも言われていますが、彼女の軽率さが発端となっておきる事件ばかりなのに、真の意味では誰もそれを糾弾しないのがどうしても気になってしまいました。 『ユニークライム』ユニークと呼ばれる能力者が当たり前にいる世界で、能力者のみが集う学園の創立者である母からある少女を守るよう命じられた主人公。やたらと女子キャラを出しすぎて後半は差異化できてなかったのと主人公自身のユニークをうまく物語で機能させてなかったのが惜しい。書きたいことやキャラをしぼって、たくさん書いてみてください。 『幻魔大佐の災難』ニヤニヤしながら楽しく読めるが、ここまでするならもう少しネタ的にはじけさせて欲しかった。惜しい。 『クロイブ』後半のクロイブの勧誘方法やメンバー構成はおもしろいが、肝心の活動内容がやや地味。もう少しはったりをかましてよかったのでは。 『$diver』人工知能やサイバー犯罪捜査等、メインの設定や細部の描写において全体的な旧さが印象に残る。一度目線を変えて、別の新たな作品を構築してみてほしい。 『銀河チャンネル』発想は面白いが、活動描写が表面的すぎてアイディアを支える地盤が作れていない。1日歩き通したら疲労はどうなるだろうか、服は、靴は、食事は? もっと細部まで想像をめぐらせてほしい。地の文について、三人称文の場合も「語り手」を意識して記述すると格段に読みやすい文章になる。 『アサルトファング』世界を丁寧に紡ぎだそうとする書き手の思いが伝わってきて好感がもてるが、如何せんモチーフが古風に過ぎるかと…。世間に迎合してほしくはないけれど、本当に講談社BOXでのデビューを目指しているのであれば、もう少し現在若者が熱狂している作品の研究をしてテーマを調整する努力はしてほしいところだ。 『動物に焦がれる男』中盤からの、ふとした出来事からマフィアに狙われていくまでの追い込まれっぷりに迫力があった。そのあとにはさまれる回想からラストまでが急ぎすぎ。女性との出逢いから妊娠までが早すぎ……。 『コンピュータ特捜官 一色沙織』主人公視点の文体が荒く、嘘っぽく見えてしまう。 『ヴァンピールとビターチョコレート』咬まれれば感染するという吸血鬼ものの特性を生かしきれていない。愛する人を殺すリスクを背負って恋をするという覚悟をしっかりと描いて欲しかった。 『創作のカミ様』「物語を綴るとヒロインが具現化する白紙の本」というシンプルな設定を、一風変わった全寮制文学高校の学園生活の中にうまく落としこんでいる。文学劣等生の主人公と身勝手なヒロインの絡みが過不足なく描かれ、主人公の幼馴染みの女子の造形もキラリと光っている。作品全体を貫く主題もしっかりしている。 『路地裏のジョニー』書きたいテーマと実際に書かれている内容とがずれてしまっているように感じた。夢に向かって走れなかった人間の後悔に主眼を当てて書いたほうが、読み応えのあるものになったと思う。また、描写が散漫。キーとなる音楽と、それ以外の要素(学校生活など)で、描写のボリュームにもっと差をつけたほうがよい。 『君の心配事は、どうやら僕だったようだ』常にどこかほがらかさを漂わせた文体で、爽やかに楽しく読めました。登場人物達の真っ直ぐな性格も好感が持てます。読者に嫌われない、というのは大切な資質です。ストーリー構成をもっと練って、うまく引き込む物語づくりができれば受賞にいたると思います! 『鬼薙〜ONI_NAGI〜』見えないはずのモノが見えるようになった少年と、<鬼薙師>である少女が事件を追う。丁寧な語り口は真面目で好感がもてるが、キャラの造詣・ストーリーラインに既視感があり、予想を裏切ってくれるものがなく物足りなかった。タイトルふくめネーミングは格好良い。 『夢潜り六道』3人称視点から描こうとしているのは好感が持てるが、展開が迷走気味。 『メルヘン・コンプレックス 完全版』白雪姫やシンデレラ、ヘンゼルとグレーテルなど豪華なキャラクターを使っているものの、シニカルな文体が災いしてかパロディとしてしか読めない。オリジナルキャラで書いて欲しい。 『変身警報発令中』二種の精霊のエネルギーによって人間社会の均衡が保たれている物語世界を、破綻なく描くことに成功している。主要登場人物たちもそれぞれ丁寧に書き分けられており、生き生きと躍動している。 『聖天使オパール』ベタな登場人物とベタなエピソードをベタに繋げた話、という印象。どこかに意外性がほしい。また、作中での死の重み(あるいは軽さ)が伝わらず、ヒロインの心情変化についていけなかった。 『タイムボウイ』最初脚本として構想されたためか、地の文が簡素すぎ、擬音が多すぎです。書き手の脳内映像をそのままト書きで読んでいるかのようで、小説としての取っ掛かりがなさすぎて辛いです。せめて冒頭から、「流れ者」の一人称視点で語っていれば、もう少し感情の起伏があって読みやすかったのではないでしょうか。 『朝霧姉妹の対偶密室』随所に挟まれる主人公の思弁的な語り口は魅力ではある、筆力も高い、が話を進めるペースが遅すぎる。中盤からようやく事件らしいものが動き出すがもう少しだけ急ぎ足な展開を。 『砂魔女』試みは認めるが、東洋っぽさが上手く伝わってこない。 『灰色のフラトーゼ』雰囲気のある文体はかなり読ませるものがある。だが、主人公の素性はもっと早めに明らかにしたほうがよかった。 『シビリアン・ウェイストランド』なぜ群馬県だけが東京への電力供給の犠牲になって荒廃したのか、説明不足ではないか。世界設定の根底が安定していないと物語に入り込みにくい。 『絆話』類型的な登場人物ばかりで、現実味がなかった。かといってハッタリがきいているわけでもなく、全体的に中途半端な印象。「ライトノベルとはこうでなければならない」という枠に自分を押し込めてしまっているような気がする。もっと自由に書いてほしい。 『ドリーム・ファンタジー』ネバーエンディングストーリーの構造をオンラインゲームで置き換えるという着想は、ベタながらも受け容れやすかったです。もう少し現代性とリアリティを取り入れられれば、読み手の興味を強く喚起できるでしょう。主人公の少年が、ゲームの合間に猫の世話をするシーンなど、人物に陰影をつける細かな描写は非常によかったです。ファンタジーではなく、学園モノなど現実度の高いストーリーで、構成に凝ったほうが資質を活かせそうな気がします。 『ブラッド』鬼を使役し事件を解決する術師一族の物語。設定だけを見るとありがちだが、人間関係の構築や作りこみをとても頑張っている。しかし設定を展開させるために新たな設定を次々投入するのは正直うまくない。 『エクリチュール666』安定した文体で安心して読めるが、スラップスティック過ぎて、途中から麻痺してしまう。 『昨日の空、明日の翼』タイムスリップの説明が曖昧だったり、類似の作品がいくらでも思いついたりという問題はある。だが読み応えという点では一段飛びぬけているものがあった。現代に戻ってきてからの描き方を工夫してほしい。 『マイノリティ・アーツ』バンドもの青春小説として成立している。ただ、主人公の暴力的でパンキッシュな魅力の底にあるもの、なぜ彼が人をひきつけるかという部分の説得力が、いまひとつ弱い。 『お伽倶楽部 〜召される抱擁〜』異能力は出さずに、現実的な道具立てだけで処理したほうがぐっと緊張感の増した展開になったように思う。「病」について扱いが乱暴な点がやや気にかかった。 『カマイタチと呪い師は蝶々の夢を見るか?』ケレン味のあるキャラとストーリー展開は良いところなのですが、地の文の語り口に粗が目立って雰囲気を損なっています。たとえば「実は二人はある人物を探している」と地の文で直接書いてしまうと、それだけでせっかくの謎めいた感じが冷めてしまいます。テクニック面での研究をしてみてほしいです。 『Wストラテジー 〜零感病と大小人間〜』タイムスリップ展開や能力が荒唐無稽で終始はいりこめなかった。主人公がなにをしようとしているのか、物語がどこへ向かおうとしているのかがわからず行き当たりばったりな印象を与えるせいだろうか。何を書きたいか、定めてから書き出してみては。 『夢と現のシルバーバレット』ネトゲ世界の爽やかな冒険譚で、好感は持てるが、驚きが足りない。 『アリスは新たなる跳躍を』飽きさせずに物語をひっぱる力はなかなかのもの。ただ、ラストを含め、ご都合主義がところどころ鼻につく。 『ウエストサイドツインズ』双子姉弟の天才野球選手をめぐるプロ野球小説だが、文章が説明的で長いあらすじを読んでいるような印象を受ける。野球の試合経過の説明等は極力減ら し、キャラクターを前面に押し出すような形のほうが小説としてしっくりくるのでは。 『にものをがはとてでなしいらきりべい』道具立ての多くが、既存の有名作と重なる。冒頭のWikipediaからの引用もそうだが、着想元が原形を保ちすぎていて物語が浅くなっている。文体には華がある。状況描写で、数行前と矛盾する文章がたびたび出てきた。落ち着いて推敲を。 『オルファクトリー』脳内孔明や三枚目の主人公など、キャラクターが非常に魅力的で、笑いながら読みました。反面、匂いフェチであることなど重要な設定に何の説明もなく、中途半端なところで処理されているのは無視しがたい欠点です。ぜひまた送ってください。 『わんけい』ミスリードをしてラストをひっくり返してやろうという心意気は感じる。しかし登場人物の誰の行動・動機にも納得しづらく、幽霊の設定も物語を生かすのにうまく機能していなかったのが残念。 『ニナ・フォールダウン』少し説教臭い。もう少し好感が持てるキャラクターを軸にすべき。 『繋がりリック』文体がこなれておらず、会話が物語を進めていないので読んでいてつらくなる。奇本探求部はおもしろいのでもっと掘り下げてほしかった。 『ゲッキョクじゃなくて月極だってば』クルマと人を結ぶ55話のショートショートは、飽きさせず読ませる。が、著者がこの作品の読者をどのようにイメージしているのか、いまひとつ見えてこない。 『Ho-Lo-Ghost』「絶望」という単語が頻出するが、その具体的な内容についてよくわからなかった。全体的に、大げさな単語に対して中身が空疎で、主人公たちの感情の動きについていきづらい。ストーリーの構成はよく考えられていると思った。一人称より三人称のほうが向いている内容・文体だと思う。 『アリスと木瓜会』エピソードがだらっと繋がってしまっていて、「何が語られるのを楽しみにこの本を読むべきか」がなかなか判明しないのが大きなマイナスポイントです。また、タイトルがストーリーの雰囲気を伝えていないのも惜しいです。本として世に出るときのことを想像して書いてみてほしいです。 『The Stranger and The Strange Country』基礎的な文章力も高いし世界設定もきちんとしているが、正直なところ真面目な話すぎて敷居を高くしてしまっているように思う。この先デビューを目指すならなにか読み手に「これは自分の物語」だと身近に感じさせる要素をいれてみては。 『十二歳の秘密』悪くないが、12歳の少女視点の文体が、突然ぶれるのが気になる。 『青色御刻噺』登場人物がごちゃごちゃしており、もっと整理が必要。読ませる工夫を。 『混濁の百合』女子高校内における女子同士の恋模様を繊細な感情描写までよく描けているが、たとえば傍観者的なキャラとしてでも男性を登場させてほしかった。 『誰かの為に醒めた夢から』読後感がとても良い。夢が現実を上書きしていくルールが若干曖昧で分かりづらかったのが惜しいが、ドラマもあり発想も面白く次に期待。書体は非常に読みづらかったので変えて欲しい。 『余罪のタイムライン pm2:22の事件簿』キャラ設定と着想は面白いのに、演出で損をしている印象。語り手の都合でストーリーを進めていくので、かえって視点が定まらずお話が頭に入ってきません。ミステリーでもあるので、視点を固定して、その上で各キャラを立たせる工夫をしてほしいです。たとえば万引きのシーンを冒頭に短めにもってきて、そのままつばさがバイオリンを弾くところへ場面転換するだけでも、抑揚がついたのでは。迅のキャラはかなりよかったので、迅とつばさの関係性に集中して、シンプルな構成で別作品を書いてみると良いと思います。また読みたいです。 『窓』キャラクタはそれぞれ魅力的で、とてもよかった。それだけにストーリー部分の薄さが残念だった。科学知識の多くがストーリーと絡まない一回性のひけらかしに終わってしまっている。作中のエタノール=クスリのように、突飛さを納得させるような知識の使い方は非常に面白い。 『古き約束の書』童話の語り口で、童話のような物語はカテゴリ的に厳しい。 『天使の檻』文章力は問題ない。入谷島と天使細胞庁という装置が効果的に使われておらず、地味な印象で終わってしまった。派手さがほしい。 『スピンレッドの追憶』ストーリーや冒頭シーンの着想は光る。が、全体的に文章が硬く、正確さもやや不足している。多くの既成の小説を参考にして、自分なりの小説の文章を確立してほしい。 『月が昇るまで待って』一方がヴァンパイアの双子の姉妹のエロティックで残忍な関係性は独特、詩的な魅力もある。ただ、長編小説としては、もう一歩、物語に大きなうねりが必要ではないか。 イラスト部門受賞作はありません。総評として:描いて描いて描きまくって、もっと描きなれてください。まだまだ練習量が足りない人が多いように思います。たまには3次元のものを2次元に落としてみるとか、上手いイラストを完全模写してみるとか、そういう練習で新しい線が描けるようになることもあります。頑張ってください。 |