ミステリーの探偵役としてのアーサーの役目は、奇蹟と見えた現象を現実に戻すことではなく、解決してなお、人知では至れないのかもしれないものを垣間見せることだ。
ピラミッドやナスカの地上絵が人々をワクワクと引きつけ続けるのは、垣間見える・もしや・があるからだろう。
収録作「バグズ・ヘブン」では特に、論理的解決の外側に眼目があるという点が顕著で、密室トリックなどは重要ではなく、ラスト一行が再び構築する神秘や、犯人が密室にこだわった動機を巡る何重ものアイロニーなどを、読者が思考遊戯の道具にしてくれればと思う。
第二話も、奇蹟と出合ったと信じた者の心理を巡る物語となっている。
ダイイング・メッセージの反転スタイルを意図した書き下ろしの第四話は、特に女性読者から、「不思議な余韻を味わった」という好意的な反応が多く寄せられた。まずまずは効果的だったのかもしれない。
以上の収録作はどれも、舞台こそ世界各地様々だが、宗教観というか、奇蹟観を照射する観念的演出に少なからず彩られているので、第三話「聖なるアンデッド」は趣向を変え、冒険アクション調を強くしてみた。
作中に登場する、首から血を流し続けるやせ細った〈ゾンビ〉は、執筆している過程で思いついたもので、ストーリーにうまくはまってくれたと思う。
注でも記してあるが、こうした地下神殿にクスリを用いた信徒たちを誘導するということは、かつて実際に行なわれており、大舞台を鮮烈に利用した人心操作や統治方法には驚嘆する。
最近、こうしたスケールの刺激をよく受け続けた結果だろうか、新シリーズの発想がわいた。コンセプトは、それこそピラミッドではないが、“挑むべき謎は地球そのものだ!”――。
大風呂敷に見合う作品、ぜひとも形にしたい。
また、『サタンの僧院』に登場したアーサーの弟を覚えていてくださって、今回姿のないことを気にした読者もいたようだが、アーサーの長編を書くような機会があれば再登場願うかもしれない。
- 『セシューズ・ハイ 議員探偵・漆原翔太郎』 天祢涼
- 『プライベートフィクション』 真梨幸子
- 『カマラとアマラの丘』 初野晴
- 『増加博士の事件簿』 二階堂黎人
- 『戦車のような彼女たち』 上遠野浩平
- 『カンナ 京都の霊前』 高田崇史
- 『魔境の女王陛下 薬師寺涼子の怪奇事件簿』 田中芳樹
- 『猫柳十一弦の後悔 不可能犯罪定数』 北山猛邦
- 『天山の巫女ソニン2 海の孔雀』 菅野雪虫
- 『さよならファントム』 黒田研二
- 『アケローンの邪神 天青国方神伝』 高里椎奈
- 『覇王の死 二階堂蘭子の帰還』 二階堂黎人
- 『空を飛ぶための三つの動機THANATOS』 汀こるもの
- 『QED 伊勢の曙光』 高田崇史
- 『闇の喇叭&真夜中の探偵』 有栖川有栖
- 『バミューダ海域の摩天楼』 柄刀一
- 『虚構推理 鋼人七瀬』 城平京
- 『メルカトルかく語りき』 麻耶雄嵩
- 『生霊の如き重るもの』 三津田信三
- 『古道具屋 皆塵堂』 輪渡颯介
- 『縛り首の塔の館 シャルル・ベルトランの事件簿』 加賀美雅之
- 『シンフォニック・ロスト』 千澤のり子
- 『ハウンド 闇の追跡者』 草下シンヤ
- 『聖地巡礼』 真梨幸子
- 『夜の欧羅巴』 井上雅彦
- 『眠り姫とバンパイア』 我孫子武丸
- 『ひなあられ』 日日日
- 『燔祭の丘 建築探偵桜井京介の事件簿』 篠田真由美
- 『小鳥を愛した 容疑者』 大倉崇裕
- 『琅邪の鬼』 丸山天寿
- 『薔薇を拒む』 近藤史恵
- 『光待つ場所へ』 辻村深月
- 『星々の夜明け フェンネル大陸 真勇伝』 高里椎奈
- 『幻人ダンテ』 三田 誠
- 『キョウカンカク』 天祢 涼
- 『プールの底に眠る』 白河三兎
- 『幻獣坐』 三雲岳斗
- 『妖精島の殺人 上・下』 山口芳宏
- 『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』 辻村深月
- 『奇蹟審問官アーサー 死蝶天国』 柄刀一
- 『残酷号事件 the cruel tale of ZANKOKU-GO』 上遠野浩平
- 『萩原重化学工業連続殺人事件』 浦賀和宏
- 『トワイライト・ミュージアム』 初野晴
- 『完全版 地獄堂霊界通信(1)』 香月日輪
- 『無貌伝〜双児の子ら〜』 望月守宮






















